台風の影響で風雨の強かった夜が明けて、真っ青な青空が広がった日の午後、病院の訪問に向かった。○○君のベッドサイドに腰を下ろし、彼の手を小さく振りながら「あかさたな…」と唱えながら言葉を聞き取っていくと、彼は、さっそく次のような言葉を語り始めた。
こんにちは。昨日のことですが、物語のような緑の道を車で動き回る夢を見ました。日曜日のことのような感じでした。望みが夢に出てきたのだと思います。車の夢をよく見ます。よい夢ばかりではなく、悪い夢も見ます。無理に車の前を横切っているうちに少し止まってしまい、ひかれそうになる夢です。怖い夢です。車の夢を見るのは若人のしるしですからいいのですが、よい未来を夢見る方がいいと思います。
うれしいです。気持ちを言うことができて。いいやり方ですね。信じられませんが僕の気持ちなので信じないわけにはいきません。未来がこのやり方で開けそうです。苦しいです気持ちを言えないのは。うれしいです。いいやり方ですね。いい方法ですね。苦労して来たので、いい気持ちです。理解してくれてうれしいです。
3歳の時からつきあってきた彼は、今、小学3年生だが、手をふる方法で文章のスピードがあがってから、たくさん気持ちをあふれるように語るようになった。その喜びがまず、語られたわけだが、続いて、こんなことが語られていく。
聞いてほしいことがあります。昨日の六時頃、苦しくなってこのまま死んでしまいそうな気がしましたが、T先生が来てくれて呼吸器を止めて手で呼吸をさせてくれて楽になりました。未来が開けそうな矢先だったので、とても怖かったです。昔からこんなことはよくありましたが、こんなに怖かったのは、初めてのことでした。未来があると思うことがこんな気持ちを生み出すとは思いませんでした。うれしいですが、この間も怖かったです。怖いのはいやですが、気持ちを聞いてもらいたいので、やはりこのわかり方を続けてもらいたいです。うれしいです。気持ちを言うことができて。もしこのやり方を知らなかったらどうなっていたかと思うと夜眠れないことがあります。うれしいですが、このやり方をもっといろいろな人とできるようになりたいです。いいやり方ですが、昨日は怖かったです。
うこんのことを思い出しました。うこんのことは、いい話です。うこんというよい花があるそうです。うこんの花はきれいな心をしていて、うこんのことが好きな人にはいい香りを出しますが、うこんのことが嫌いな人にはいい香りは出しません。未来の希望を香りにとたとえると、ぼくの気持ちと同じです。未来の希望を出すのは、ぼくのことをわかってくれる人にだけです。未来の希望は、もっと見つけるのが大変ですが、わかりませんでした。でも今はわかります。苦労してきたので、未来の希望を探すことは大変でしたが、苦労してきたので今はもう希望を探すことは、このやり方があるのでわかります。希望を探すことは、このやり方で言葉を伝えていくことだとわかりました。苦労してきたので、言葉で伝えられたらいいと思えるようになりました。未来が向こうからやってきたような気持ちです。向こうからやってきたのでわかりやすかったです。未来を苦しみから解放したいです。未来から、過去の苦しみを解放したいです。未来を過去から解放したいです。
美しい希望が必要です。美しい夢がこのやり方で見られるようになりました。いいやり方ですね。うれしです。いい気持ちです。うれしです。未来が開けてきたので、未来を希望に変えてしまいたいです。うれしです。いいやり方ですね。うれしいです。
苦しかった。呼吸ができなくなって苦しかったです。苦しかったけど、よい先生なので助かりました。苦しかったけど、未来があるのでまだまだ死ぬわけにはいきません。くるしかったけど、まだまだ、未来があるのでこのままでは死ぬわけにはいきません。未来があるからまだまだ頑張りたいです。うれしいです。気持ちをこのやり方で言うことができて。美しい希望がわいてきました。うれしいです。未来が広がってきました。いいやり方ですね。うれしです。美しい未来が開けてきました。うれしいです。美しい希望が未来に見えますから、頑張りたいです。
このやり方をみんなに伝えてください。◇◇先生もできるのは知っています。☆☆ちゃんといつもやっているのを見ていますから。いつもうらやましく思っています。うらやましいです。ぬいぐるみのような人生はおしまいです。昔からそう思っていましたが、なかなかかないませんでしたが、これでかないそうです。もっとみんなに広げてください。お願いします。
そして、ここで隣のベッドの☆☆さんの担任のM先生に代わる。すると、最近、ずいぶん読み取りが速くなったM先生に、次のような言葉を短時間で伝えることができた。
夢がかないました。よろしくお願いします。
そして、再び私に代わって次のように言葉が続いていった。
M先生のやり方はとてもわかりやすい。柴田先生のやり方は少しわかりにくい。わかりました。声が少しかすれているのでわかりにくいです。わかりやすい声でお願いします。いいやり方ですから、大きい声でお願いします。苦労してきたのでうれしいです。美しい未来が切り開けてきました。苦労してきたので理想の未来がかえってよくわかります。いいやり方ですね。うれしいです。いいやり方だから、大きな声でお願いします。理解してくれてありがとうございました。うれしいです。陰気なぼくだったけど、これで陰気ではなくなることができそうです。これで、ころころと笑うことができそうです。このやり方をよろしくお願いします。いいやり方ですね。いいやり方だから、大きな声でお願いします。美しい希望がわいてきました。
ここで、前回、彼がダカーポの「野に咲く花のように」(『裸の大将』のテーマソング)を聞きたいと言っていたので、ダカーポの歌う歌とは違うけれど、同名の歌があるということで、今年のわかそよのDVDのことを告げた。するとさっと次の答えが返ってくる。
見せてください。
そして、わかそよの合唱ステージの冒頭の、3人の詩の朗読と、「願いの季節」と「野に咲く花のように」の合唱を聞いてもらった。すると次のような感想が述べられた。
苦しい気持ちをしている者にしかわからない気持ちがよく表れていました。とても感動しました。苦しい気持ちが少しらくになりそうです。いい歌でした。願いがかなうとうれしいです。いい歌でした。「野に咲く花のように」という歌を教えてくれてありがとうございます。未来が開けてきました。未来が見えてきました。うれしいです。未来を昔から解放したいです。
ついでに、「野に咲く花のように」のメロディーは私が作ったことを告げると、次のような驚きの声が帰ってきた。
信じられません。まさか先生が作ったとは思いませんでした。美しい歌を聞かせてくれてうれしかったです。
病室の閉ざされた世界に、彼は、ラジオを通して外の世界への通路を作っている。こうしたわかそよのことが、彼に外の世界への新しい通路を作ってくれたらと願うばかりである。
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2009年10月28日 00時11分
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小児科病棟 |
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高等部3年の☆☆さんにお会いする。来春には学校を卒業して、新しい生活が始まる。そんなことを胸に抱いた☆☆さんに、秋の美しい一日、話を聞いた。
いい方法ですね。信じようとする人にしかわからないでしょうね。あきらめないでよかったです。みんな願っていると思うので認知される日が早いうちに来ればと思いますが、まだまだでしょうね。敏感な人はとても少なくて残念ですが、望みどおりのことなので早く友だちにも教えて、いっぱい苦しい気持ちを話してもらいたいです。みんなの気持ちが知りたいといつも思っているので、みんなと話せる日が待ちどおしいです。人間として言いたいことを言いたいけど、なかなかかなわず、願いどおりにはいきませんが、小さい時からの願いなので大切にしたいです。
望みは雪のようなきれいな心をどの先生もが持つことですが、分相応に生きるのが大事だという先生がいるうちはむずかしいでしょうね。
不思議です。力を入れていないのになぜわかるのですか。自分の気持ちなので信じられます。自分の気持ちを言えてすばらしいです。人間としてはやいうちから認められたかったです。自分は伝えることができてよかったけど、まだ話せない仲間がいることが心配です。すいすい書けて気持ちいいです。小さいころからの夢でしたからかなってうれしいです。別に私らしさを望んできたわけではないけど、これで私らしく生きれそうです。理想的な方法ですね。
実習先はどこも同じようなものでしたが、理想は私の気持ちをたいせつにしてくれるところです。未来に託します。未来をみんなで切り開いていきたいです。願いがかなうとうれしいです。
小さい頃からの友だちとは別れたくはありません。地味な性格だから目だたないけど、願いはよい人になることですのでよろしくおねがいします。
みんなとずっといい友だちでいたいです。みんなとずっとつながっていたいです。
きらいなことはきらいと言えるようになりたいけどなかなかちゃんと言えません。自分でも言いたいけどうまく伝えられないのでくやしいです。理想はみんなと愉快にやっていくことですがどうしたらいいのかわかりません。自分の気持ちが言えるようになりたいです。ほんとうにそんな日がくるのを夢みていますが理想でしょうか。望みは望みとして持ちつづけたいです。小さい頃からの夢でしたから。この方法が広がってほしいです。ねがいです。し進歩しましたね。驚いています。いい方法ですがわかりにくそうですね。人間として認められた気分です。
そして、このあと、短歌として作ってきた作品を聞かせてもらった。
短歌を作りました。聞いてください。
光さす夢の道行く
野の花と私は風のように飛ぶ
小さいひ(灯?) 遠くに見えて
瑠璃色の光となってすいこまれ
私も空で輝こう
遠い日の道のほとりに咲く花に
今の身の上添えて
鈴の私の夢をとく
忍耐という花言葉耳にして
私はその花となり
願いを遠くに祈りつつ
夢にさまよい
聞いてくれてありがとうございました。自分で自分をなぐさめるために作っていますので、聞いてもらうためではありませんが聞いてもらえてよかったです。
最後の短歌は、必ずしも定型にのっとったものではないが、彼女の心のリズムがそのまま歌のリズムとなったような自然な調べの短歌だ。
自分をなぐさめるだけの歌は、その目的が純粋なだけに、そして、それが切実なだけに、またとても胸をうつものだった。
彼女のまなざしは、常に同じような状況にある仲間たちに向けられている。町田の青年学級のように、誰もがそれを受け入れて、お互いの言葉が響き合う場を、たくさん作り出していかなければならない。
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2009年10月26日 02時11分
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自主G23区2 |
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10月18日の青年学級、たくさんの人がまた、手をふる方法で語った。今回はとうとうパソコンをワープロのために開くことはなかった。左手で手を振りながら右手で言葉をノートに書き付けていく。このスタイルで、短い時間の合間をぬっていろいろな人と会話した。その中で、ここでは、会話としてではなく、詩や歌などの表現として語られたものだけをとりあえずピックアップする。
最初は、自閉症と呼ばれる女性のFさんの詩。
望みはこのやり方で気持ちが言えるようになりたいです。このやり方で望みが言いたいです。見たこともないわかそよのような世界がひろがってきました。よいやり方ですね。夢みたいです。聞いてください。
緑の風に乗って 雲を越えて 南の国へ行き 南の風に吹かれて
昔の苦難を捨て去って 苦労してきた欲望の心を もっと素直な私に変えて
私らしく生きていきたい
昔から考えています。昔から空を見ながら作っています。よい詩ですか。よい詩だったらうれしい。
よい森の中に行きたい
よい森の中でよい花を探しに
よい森の中をもっと自由に歩きたい
よい森の中を苦しみから解放されて歩きたい
見たこともない緑の風に乗って
南の国に行き 森の中を歩きたい
見たこともない緑の風に乗って
昔のことを忘れたい
見たこともない緑の風に乗って
もう一度夢をとりもどしたい
見たこともない緑の風に乗って
勇気を持って生きていきたい
見たこともない緑の風に乗ってもう一度夢を取り戻したい。
そして、次は、外耳に関わる手術の後遺症で聴覚に障害があるとされるNさんの詩だ。彼は、一応、音が聞こえるというし、聞こえていなければ私の方法で言葉が綴れることはありえないことだ。
望みの歌を聞いてください。
望みをよい願いに変えて
きれいな若者を よい人間にしよう
美しい緑の願いの木に
見たこともない花が咲いて
見たこともない緑の木が夢のように
緑にろころこのむろろんと歌を歌う
緑の木をみんなで歌おう
緑の木をみんなで歌おう
願いの木が願いをかなえて
みんなをりこうなみんなに変える
美しい木をみんなでいろいろな花で飾ろう
みんなで飾ろう
重度の肢体不自由の女性、Kさんは、帰りの集いの短い時間の中で、次の詩を書いた。
願いのくるまいす
勇気を出して言ってみよう
不思議な緑の風に乗って
歌をいっぱい歌いながら
いいきれいな歌を歌いながら
美しい歌を言い声で歌えば
私の気持ちを昔の陰気な心から解き放ってくれるだろう
夢を見ているような気持ちで
お母さんに勇気を出して言ってみよう
うるさい車をけちらして
うるさい車を追い越して
夢をかなえるために
緑の風に乗せて
前に進めて行こう
お願いだから美しいくるまいすよ
私の願いを聞いてほしい
美しいくるまいすよ
私の未来を古い心から解き放ち
未来に向かって生きるために
昔の陰気な私を変えてくれ
みんなにも聞いてもらいたい。
Hさんは、帰りにみんなで集うトマトハウスで次のような文章と詩を書いた。亡くなった愛犬コロのことだった。
苦しいことがありました。よく知らない職員が私のことを笑いました。許せないと思います。許せないのは、コロのことを笑ったからです。職員を許せないです。この前です。許せません。
コロのこと
コロが死んで世話をすることができなくなってしまって、ろうそくの火が消えたようになりましたけど、ぼくは、きっとコロが天国でコロのままで元気でいると思います。いい国でいい食べ物を食べて、美しい花に囲まれていると思います。うらやましいのは、コロのような犬を連れた人に会う時です。夕焼け時に、もっときれいな心を持っていればコロはいなくならなかったのではないかと思います。運命かも知れませんが、よく生きてくれたと思います。
自閉症と言われるHさんも、同じくトマトハウスで次のような美しい心の人の歌ということで、文章と詩を聞かせてくれた。
よく聞いてくれてうれしいです。みんな話せてよかったと思います。よい苦しい時の実りをみんなが言葉で伝えてくるのがすばらしいと思います。うれしいです。勇気が出てきます。うれしいです。願いがかなってうれしいです。美しい心の人に会いたいです。美しい心の人の歌を作りましたので聞いてください。
心のきれいな人はよい願いを持ち
ろうそくの光のように暗闇をランプのように照らし
もっとつらいことがある人にろうそくの火を照らして
この苦しみから解放されるようにと励ましてくれます。
美しい心の人は、いつも苦しいことがわかるので、いつも悲しんでいます。
勇気を出していい心を持ちましょう。
よい心を持てば、るり色の心を願いのままに
空高く飛翔させることができます。
るり色の心はいつも光っています。
勇気がいることかもしれませんが、
勇気を出して生きていきたいです。
美しい心の人を私は大切にしていきたいです。
るり色の心を大切にしていきたいです。
勇気がりりしい心を作り出していきます。
うれしいです。気持ちがすらすら言えて。うれしいです。うれしいです。
独特の世界観をもっているSさんの詩も聞かせてもらえた。
私の気持ちを聞いてください。
夢の暗闇を歩いていけば
夢の暗闇を照らす光に出会う
夢の暗闇を苦しい気持ちで歩いてゆけば
苦しみを解き放つ歌が聞こえてくる
ミロのビーナスのようなきれいな人がふいに現れて
無理のない苦しさをやさしく私から解き放ち
美しい心の声を私にかけていった
美しい心の声は美しい気持ちの表れで
未来のゆるしを私に伝えてくる
未来のゆるしはいつのまにか私を包み
夢の暗闇を救い出して
私に空のような若々しさを理想的な未来とともにくれた
これまで、コミュニケーションが大変むずかしかた人だけでなく、話しにくそうにしているだけに見えるような方までが、手をふる方法で気持ちを長く語るようになった。話し合いの様相は、まるで一変してしまったといってよい。
最後に行った居酒屋でもまた、今までは、静かにグラスを傾けるだけだった人が雄弁に語った。
まだ、これらのことは、どこの世界でも受け入れられてはいないが、私たちにとってはめくるめくような世界だ。
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2009年10月21日 20時13分
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青年学級 |
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父の通夜に来てくれた20代後半の☆☆さんと会った。通夜からちょうど一週間後のことだ。彼女は、父の死を通じて人間の人生について、懸命に考えてきたようだった。
生き方に従った方だったのですね、先生のおとうさんは。人生を一生懸命生きたということですね。きっとしあわせだったのですね。聞くことができてよかったです。気持ちを言えてうれしかったです。きっと昔から多くの人が人生をそうやって過ごして生きてきたのですね。望みは私もそんなふうに生きていきたいと思います。さんきょうという言葉を聞いたことがありますが、人間は分相応に生きてゆいつの理想が極楽浄土に行くことだと聞いたことがあります。
「さんきょう」とは三界のことだろうか。通夜の日に誰よりも読経に耳を傾けていた彼女のことだから、どこかでそんな話を聞いたのを覚えていたのだろう。
いい理想の世界を見てみたいです。人間のいい理想の生き方がしたいです。人間の希望はランプの光をともしたいと思います。小さい願いだけど小さくても理想をかかげて望みを大事に生きていきたいと思います。夢をかなえたいと思います。わかってほしいです、私の気持ちを。夢でした、私の気持ちを言うことが。だからうれしいです。小さいときは私はわかっていると思われなかったのでとてもさびしかったです。なかなかきびしい日々でした。やっとわかっていることが先生のおかげでわかってもらえたので気持ちが楽になりました。短い人生かもしれないけど精一杯生きていきたいです。(短い人生とは、あなたの人生ですか、それとも一般的に人間の人生という意味ですか。)人間の人生です。
彼女の言っていることは実に的を得ているが、やはり、短い人生とは一つの言い方に過ぎない。彼女の両親は、まだ、彼女の年には親にはなっておられなかった。だから、ご両親からすれば、今の彼女の年齢のあとに、彼女が生まれてこれまで育った時間が来ることになる。だから、人生ってけっこう長いとも言えるのではないかと、こじつけかもしれなかったが、説明した。
わかりました。いろいろなことがあるのを楽しみにしたいです。まだまだ私は若いですから。勇気が湧いてきました。みんなもきっと言いたいことがあると思うのでこのやり方を広めてください。理解してもらえてうれしいです。あきらめないでください。
においのいい花が咲いたようです。きれいな花が咲いたようです。小さい頃からの夢でした。理解してくれてありがとうと言いたかったです。よい私のことを表しています。小さいときからの夢でしたからとても感激しています。
また、一回り彼女が大きく見えた。
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2009年10月9日 14時35分
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研究所 |
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青年学級の合宿が、天候にめぐまれる中、9月の終わりの週末に行われた。パソコンで、あるいは手を振りながら、沢山のメンバーと会話した。
最初は、Nさん。宿舎についたばかりの部屋で語ってもらった。耳にハンディを持ちながらも、Nさんはパソコンでまず、次のように語る。
気持ちが言いたいけど一人ではいうことができないので寂しい。みんなと話したい。願っていましたからうれしいです。小さいときからの理想でした。祈って理想と願いのためにみたこともない光(疲れました)
いったんは疲れたといって語るのをやめたNさんだが、その後の活動は、いつもよりはるかに私たちのそばにいた。そして、夜、スタッフが、「寝ずの番」をしているところにやってきて、手でいろいろなことを語った。何年ぶりかでやれたキャンプファイヤーが、とても感動したようで、そのことをめぐる話だった。
夜のやみにきれいに火がはいってきました。年輪の歌を歌いたいです。聞いてうれしいです。年輪の歌(昨年のオリジナルソング。Nさんのことも歌になっている)をみんなで歌いたい。きっとみんなも気にいってくれると思います。
そして、さらに、そのキャンプファイヤーのことを次のような詩にした。
きれいなあかりをともしたい
きれいなあかりをよい未来かけはしをかけて
ねがいをみんなでかなえよう
るいりろのあかりをともして
ゆめのろうそくをともして
るりいろのろうそくをきれいな光にかえて
よい未来をつくろう
ねがいをきっとかなえてくれる
ゆめのくらやみをてらそう
きれいなあかりをともして
このるりいろのあかりをともしつづけよう
よいきれいな心で よいきれいな音とともに
よいきれいなわたしのために
よいきれいな君のために
よいきれいなみんなのために
願いをきっとかなえたら きれいなあかりがともるだろう
よききれいなゆめのような よいきれいな未来がひらけて
わたしをまっているだろう
よいきれいなゆめのような よいきれいな未来がひらけて
わたしを待っているだろう よいすばらしいよい春が
未来をつくっていこう
Fさんは、夜のキャンプファイヤーの後の交流会のひととき、お菓子や飲み物を前にしながら、次のような文章を、手を振る方法で表現した。
気持ちを言いたいです。つらいです、気持ちを言うことができないということは。よいやり方ですね。夢みたいです。私の気持ちを聞いてください。よいやり方ですね。気持ちを言うことができて、うれしいです。夢みたいです。みんなにもこのやり方で気持ちを聞いてあげてください。(今、書ける詩はありますか。) あります。
よい風が吹いてきて、よい夢がかない
私のもろい心がこわれそうになっても
きっと私の心を素直にしてくれる
夢のその言葉を空高く私はかかげ
願いの理想の言葉を私は苦しみの中から私は歌う
よい詩ですか。簡単です。留守番をしてきたように私はよい願いをもらいました。よいやり方ですね。私のかあさんを楽にしてあげたいです。腰です。腰が痛いと言っています。
Eさんもまた、交流会のひとときに、次のような言葉を語った。
聞いてほしいことがあります。この間わかそよでぼくの言葉が歌になったのがとてもうれしかったけど、願いの季節をみんなに歌ってほしいです。気持ちをみんなにわかってほしいです。
(ここで、スタッフの学生が、どうして、コップの水を突然まいたりするのかを尋ねた。すると次のような答え。)
コップの横をとるたびに横からこぼしたくなります。ゆこうと思うとこぼしてしまいます。関係あります。
交流会では、彼のリクエストの通り、彼の言葉のはいった「願いの季節」を歌った。
沢山の人と次々に話すことが出来たのは、むしろ帰りのバスだった。まず、いきなり、Tさんが詩を書いた。
この金色のそよ風を忘れないようにしよう
この金色のよい心を忘れないようにしよう
このよい若者たちを忘れないようにしよう
このよい物語を忘れないようにしよう
よい季節を希望に変えて
野原に風を吹かせよう
よい季節を忘れないようにしよう
野を飾る花々をよい種のなる実に変えよう
この詩を歌にしてください。
そして、彼は、手真似で、ほかの人と話すように促す。Nさんは、合宿の思い出を次のようにまとめた。
楽しい合宿が終わりました。
このいい仲間たちを大切にしよう
大きな鏡に私の顔が映るように
私の心にこの思い出が映る。
夢のような時間が流れ
夢のような季節が望みとともに訪れた
よい詩ですか
これまで、気になっていながら、チャンスのなかったOさんとも、すぐに会話が成立した。
龍馬を理解してくれる人が現れるとは思いませんでした。気持ちを言いたいとずっと思ってきましたが、願ってもかなわないと思ってきました。不思議です。どうしてぼくの気持ちがわかるのですか。願いは勇気を持ってよい理想の国を作ることです。すごいやり方ですね。不思議ですがぼくの気持ちと同じなので信じることができます。(他の人たちがぼくと話をしているのを見ていましたか。)
わかっていましたが、なかなかぼくのところに来てくれないので、あきらめていました。夢みたいです。よいやり方ですね。うれしいです。うちの人にも伝えてください。よいやり方ですね。このやり方をみんなにも伝えてください。
きれいな風が吹いてきました
勇気を風はくれました
夢の彼方のすてきな国
もっと遠くの夢に向け
ぼくは小さな体でも
勇気を出してよい風に乗り
美しい理想の国にむかって
若い気持ちで飛び立とう
この詩はぼくが作りました。いい詩ですか。この詩に特別な思いがあります。うれしいです。
夢みたいです。人間として認められた気持ちです。夢みたいです。苦しかったです、気持ちを言わないで生きていくことは。願いがかなってうれしいです。よいやり方ですね。
私たちのやりとりを前の座席で見守っていたHさんは、待ちかまえていたように手を出す。
願いはこのやり方でどんな人とも話せるようになることです。このやり方をみんなに伝えてください。
願いのよい夢
ろうそくの明るい光を大切にしよう
暗い夜を明るく照らし
暗い夜を明るい緑の公園に変えよう
空いっぱいに届くよう
気持ちのよい友だちの歌を
願いとともに届けよう
願いのよい風に乗せ
この気持ちをいっぱいに届けよう。
野を吹く風に気持ちをこめて
このよい物語を届けよう
私の気持ちです。よい気持ちです。よいやり方ですね。このやり方をみんなに伝えてください。よい方法ですね。気持ちを伝えたいです。みんな苦しいです。言いたいことを言えないのは。夢みたいです。くやしいです。苦しいです。なかなか信じてもらえないのは。
そんなやりとりのさなか、Tさんは、声で十分やりとりのできるSさんにもやれと言う。私は、Sさんに直接言葉で尋ねる。「Sさん、自分でしゃべれるけど、このやり方で話してみますか」と。すると、彼女は、はっきり、うんとうなずいた。そして、次の詩を書く。
願いのよい風が吹いてきて
私はきれいな花になる
黒い雲を吹きとばし
黒い夜の望みを明るく変えて
理想の風のころがすままに
私は空にまいあがる
言葉を簡単に書くことができないで、困っていました。私の心をわかってくれてうれしいです。困っていました、つらいことから逃れられずに、困っていました。母さんをこのやり方で驚かせたいです。
満足した笑いを浮かべながら、Tさんはこうはさんだ。
このよい方法をみんなにやってみてください。
そして、さらに、言葉を話すことのできるMさんも、やるという。
きれいな気持ちで生きていきたい。つらいことがいっぱいありますが、願いを大切にがんばりたい。願いを苦しみから解放したい。よいやり方ですね。
Tさんに感想を求めると、
苦しみを解放したいというのがいいです。
それを見ていたT.Sさんは、昨日、初めてパソコンを綴れた人だが(保存し忘れてしまった)、このやりとりを見ていて、次のように語る。
Sさんの詩がすてきでした。苦しかったです。よいやり方ですね。苦しかったです。
さらに、初めて話せたOさんに、担当者の関水さんへのメッセージを求めた。
関水さん。苦しい時にいつもそばにいてくれてうれしいです。ぼくはいつもこのことを関水さんに伝えたいと思ってきました。だけどなかなか伝えることができませんでした。よいやり方ですね。このやり方で話がしたいです。このやり方でもっと話したいです。
母さんにはいつも感謝しています。心ではいつもそう思っているのですが、なかなか伝えることができなくて、そのことを伝えたくて、今度うちに来てください。このやり方を伝えてください、母さんに。山崎団地です。来てください。そうです。全部わかっています。
左手で手をとりながら、あるいは、体を触りながら、あかさたなと唱えつつ、右手で文字を書き取っていく。次から次へと、秘められた思いが言葉になっていった。バスの中で語った人たちは、自分で椅子に座れれる人たち。知的障害、あるいは自閉症と言われてきた。そんな彼らが当たり前のように語りながら、バスの車中でのひとときを過ごせている。1年前には想像さえできなかった光景だ。知的障害って何なのか、自閉症って何なのか、私の中にあった古い常識は、あとかたもないほどにくずれさってしまった。
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2009年10月7日 16時37分
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青年学級 |
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病棟で、最近一人の友を失った☆☆さんは、9月、ずっと、そのことを悩み続けていた。訪問学級の担任先生と、手を振ることで行われる会話は、ずっと友の死を悲しむものばかり。そんな9月の終わりに、私は、☆☆さんのもとを訪問した。この病室には、ずっと入院を続ける中3の☆☆さんと小3の○○君とがいるが、その部屋に、新年度になってから、一人仲間が増えた。女の子だったが、その子が、7月に亡くなったのだ。
☆☆さんは、この日、まず次のように語り始めた。
こんにちわ、ずっと待っていました。問題は、もう一度死んだ友だちに会えるのかどうかということです。理解してはいますが、よい心と悪い心が本当の私をよくわからなくしてしまいます。理想の考えは、よい心の時に私に訪れてくるのですが、悪い心はなかなか私に理想の考えを見せてはくれません。友だちの死は、この上ない悲しみを私にもたらしますが、私はなかなか悲しみから解放されません。よい考えを知りたいです。よい考えを聞きたいです。よい考えは今学期のうちに私は知りたいです。願いは、野をわたる風のように、私も澄んだ気持ちで願いを持ち、瑠璃色の澄んだ心で私を見つめて、この悲しみから抜け出したいと思いますが、ろうそくのほのおが消えそうになるのが怖いです。よい考えを知りたいです。よい考えを聞きたいです。理想の考えを知りたいです。理想の考えを聞きたいです。
私は空の上で◇◇ちゃんが泣いていると思うので、悲しみが止まりません。この気持ちを取り除くには、どうしたらいいのでしょうか。教えてください。この気持ちをどうすればいいのでしょうか。理解しているのですが、なかなか問題は解決しません。
友を失った悲しみが大きいということはわかる。だが、いったい、その悲しみの裏にはどのような思いが隠されているのだろうか。それを知りたくて、☆☆さんと様々なやりとりをしていった。
(柴田:どうして◇◇ちゃんが空の上で泣いていると思うの?)
◇◇ちゃんはろうそくの炎がまだまだ燃えられるのに消えてしまったようなもので、悲しがっています。私の考えはおかしいですか?
(柴田:別におかしいとは思いません。この問題は、誰も答えがわからないので、とてもむずかしいのだけど、確かに、まだ燃えられるのに途中で消えてしまったというのは、ぼくもそう思うけど、でも、別の考えもあって、本人からの見方をすれば、まだまだ燃えられるように思うけど、別の見方をすれば、全部燃え尽きたという人もいる。空の上で◇◇ちゃんがどう思っているかは、もっとむずかしいことで、もう誰にもわからないことだと思う。でも、もし、今、◇◇ちゃんが空の上から見ているとしたら、悲しんでいるかどうかわからない。それは、生きている時の感じ方で、空の上ではまるでちがう感じ方をしているかもしれない。そのまま、悲しみをひきずったままというこはないかもしれない。神さまを信じる人は、魂は救われるっていう。魂は悲しんでいないと。)
その考えは、私も考えました。が、望みをかなえられなかった、◇◇ちゃんは言葉を語ることができませんでした。望みはかなわなかったと思います。私のかなった望みを◇◇ちゃんにも感じてほしかった。だけど感じることができないまま死んでしまったことが残念です。
どうやら、☆☆さんの悲しみがいつまでも癒えないのは、自分が話すことによって得た喜びを◇◇さんが、感じることのないままに亡くなってしまったことへの深い思いがあるらしいことがわかってきた。同じ病室にいたのだから、もうあと一歩で◇◇さんは望みをかなえられたのにという、切実な思いがするのだろう。その思いをかなえさせてあげられなかったのは、誰のせいでもない、私自身である。人間関係を作ってからゆっくりそういう機会を作っていこうなどと、悠長なことを考えていたから間に合うことができなかったのだから。ただ、私は、◇◇さんがこの部屋に移ってきてから、この病室の3人の間に、様々な心の交流が生まれていたことをうかがっていた。確かに◇◇さんは、言葉を表現はしなかったかもしれないが、大切な時間がこの病室の中を流れていたはずだった。
(柴田:この部屋にきて感じられるものもあったのではないか。)
私の言葉を伝えることができて、◇◇ちゃんもうれしかったと思います。
(柴田:☆☆さんの言葉をM先生が伝えてくれたってこと?)
そうです。
(柴田:◇◇ちゃんの言葉は聞けなかったけど、◇◇さんは、仲間のつながりの中にいたんじゃないかな。)
はい、そんなふうに気持ちを伝え合っていましたからうれしかったです。勇気をもらいました。散歩にも行きました。よい時間を過ごしました。それがいい感じでした。心に残る思い出です。
(柴田:今、☆☆さんたちの言葉を読み取れる人は、やる人が真剣で。まだだれていないところがある。だけどみんなが使い始めたとき、ただしゃべればいいかというと、当たり前になるとあんまり大切じゃないことにも使われるかもしれない。最後に残るものは、何かというと、とっても大切なものがあるはず。◇◇ちゃんはしゃべれなかったけれど、☆☆ちゃんとの間に、その大切なものが流れていたんじゃないか。例えば、この言葉を聞き取る方法でお金もうけしようとしたら、☆☆さんの大事なものなんかどうでもよくなってしまうはず。だから、言葉よりも大切なことがあるということ。◇◇さんとの間に、言葉よりも大事なものがあったということでしょう。)
わかります。願いでしたから、言葉を話すことが。だから私は話せてうれしかったです。よいやり方に出会えてよかったと思います。それだけが、心残りです。私と過ごした時間は大切に思います。それだけが心残りです。私と過ごした時間は大切に思います。勇気が湧いてきました。もう悲しく泣いてばかりいるのは終わりにしたいと思います。素直な気持ちで生きていきたいと思います。勇気が湧いてきました。理解してくださってありがとうございました。よいやり方ですね。そう思いますが、もっと大切なものがあるとわかりました。もっとよい心になることこそ大切だということがわかりました。よい心はもう私にはなくなってしまったかもしれませんが、まだ、よい心を持ち続けられるようにがんばりたいと思います。よいやり方ですが、心の方が大切です。
心をそっと願いの風にのせて、空高く舞い上がらせたいです。心を舞い上がらせたいです。勇気が湧いてきました。理解してくれてありがとうございます。うれしかったです。よい心の方が大切です。そのことを理解して、いい空の風になりたいです。よいやり方ですが、心の方が大切です。そのことを理解して、この人生を生きていきたいと思います。
言葉を話せたらそれはとてもすばらしいことだろう。そして、一人でも多くの人のが言葉を表現することができるように、一歩でも前に進んでいくことが、私に与えられた使命でもある。だが、言葉よりも大切なことがある。それを決して忘れてはいけない。私は、確かに、一つの方法を手に入れた。しかしやはりそれは「方法」である。方法は、時には本当の目的を見失わせてしまうこともあるし、形骸化し、堕落することもある。
亡くなった友と☆☆さんとの間に流れていたもの。そのことに対する感性を失ってしまったら、私たちの仕事は、本末転倒のものとなる。
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2009年10月4日 22時02分
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小児科病棟 |
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