ともに特別支援学校に通う兄と弟と関わった。とはいえ、兄さんの方は、お疲れで完全に熟睡だったので、弟の方とゆっくりとパソコンに向かった。弟は現在小学3年生。
さっそく彼が綴ったのは、次のような言葉だった。
いしのつよいこどもになりたい
ずいぶんかべがあるけどがんばってつよいこどもになりたい
じぶんがしんじられなくなったらいけないのでじぶんをわかってふまんをいわずにがんばりたい
くるしいこともあるけどじぶんをしんじてさえいればだいじょうぶだとおもう
だからいつもじぶんをきにいるそのきもちをたいせつにしてがんばりたい
こんなに繰り返し「自分」という言葉が出てきたのは初めてのこと。力強い内容に、いちだんと成長をしたことが感じられる。
彼とは夏以来なので、最近のスイッチの援助のスピードアップに驚いたようす。
すごいじがすらすらかける
すごいねせんせい
すばらしいほうほう
そして、彼らしい文章が続く。
そばにだれかなやんでいるこどもがいたらすくってあげてね
このほうほうがあったらだれでもしゃべることができるね
さらに、こう書いた。
くよくよするのはざんねんです
うばわれたかこをとりもどすことができそうです
ねがってきましたことばをかけるようになることを
じぶんのきもちをことばでつたえることを
ずっとかきたかったことばでじぶんのきもちを
じぶんのゆめをてをつかってはなしをすることをねがっていた
ここで、兄さんと二人で夜になると、何か声を出して話しているらしいと聞いていたので、その内容について聞いてみた。
がっこうのことや げきのようなことをやっています
ねえさんやくをしたり すてきなこのやくをしたりしている
すてきなこのときはつきあってくださいとかはなしています
すてきなこにいっている
そうぞうしています
でもすきなこのすがたはすぐにきえていきます
すばらしいすがたのひとはねがいどおりにはあらわれてくれません
横でぐっすり寝ているお兄ちゃんに何か伝えたいことはないかと聞くとこんな答えが返ってきた。
このあいだけんかをしたのであやまりたい
そのことがつたえたい
おかあさんとどっちがねるかずっといいあいをしていた
そうなったのはこどもべやにふたりでねているからです
どっちかがおかあさんとねればいいとおもいます
どっちかがひとりでねればいいとおもう
どっちがおかあさんと寝るかでけんかをしたという。ほほえましいけんかのように見えた。だが、どこか、ちょっと彼らのいつもの感じとはずれている。すると、次のように文章を続けた。
おかあさんがねやすくなるように もっとぐっすりねられるように
今は二人ともお母さんと一緒に寝ているので、それではお母さんが疲れてしまうから、どっちか一人にしようという、そういう話題だったのだ。これなら、合点がいく。
ぼくはなきむしだけどひとりでもだいじょうぶです
こうたいでねればいい
おかあさんがいつまでもげんきでいてほしいから
こしのぐあいもしんぱいです
ねがいはみんながいつまでもげんきでいられることです
のぞみはとうさんのからだもずっとけんこうにいられることです
ぜひねがいがかなってほしい
そう言えば、ちょうど去年の今頃、クリスマスプレゼントは何がほしいか書いたらと促した時、自分のプレゼントのことは顧みず、「いろんなはなたばをおかあさんにあげたい いつもぼくたちのせわばかりしていてたいへんだから。ねがっていることはみんながしあわせになることです。」と書いたのも彼だった。
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2008年11月22日 23時25分
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わたしのことをおぼえてくれてありがとう
このあいだきぼうがでてきたとかいたけどなかなかしんじてもらえません
小4の☆☆さんは、冒頭から、いきなりこういう文章を書いた。そして、そのことについてしばらく書いているうちに、算数の勉強を学校で教わりたいという話へと移っていった。そこで、彼女に、どこまで計算を知っているのと聞いたり、算数はどうして好きなのと聞いたりしているうちに、こんな文章が綴られた。
525÷5=105
ひとりでおぼえました
けいさんができるようになりたい
みんなもおなじだとおもいます
さんすうがすきなのはかずのしくみがおもしろいからです
かずのしくみについてかんがえているととてもしあわせです
たしたりひいたりかけたりわったりするとかずがへんかするのがおもしろいです
単なる望みではなく、すでに自分で数のおもしろさを十分に見いだしていた上での気持ちだということがとてもよく伝わってきた。
理系文系などという区別はいいかげんなものだとはわかってはいるが、彼女は理系なのかもしれないなどと思いつつ、一応、国語も聞いてみると好きだというので、先にやった小5の○○君と同じように、詩について尋ねてみた。すると作ったことがあるとのことで、今、書けるという。そこで書いてもらった詩は、驚くべき詩だった。
このせかいにうまれて
まっしろなくもが
つらいこころをなぐさめる
こよなくあいしたくもだから
わたしのつらいきもちをしっている
もうすこししたらとてもきれいなひかりがさしてくるよと
そらのくもがいう
くらいそらにひとすじのひかりがさし
とてもあかるくいろづいて
こころいっぱいにひろがって
こころがすっかりかるくなった
そらがとてもひろいのに
こころもまけてはいられない
こころがちいさくなってしまったら
せかいにうまれたいみがない
こころがせまくなったら
はなにまけてしまう
のぞみをすてずにいきていく
もっとのぞみをそだてたい
こころがせまくならないように。
そして、こんなことを付け加えた。
つくっていました
こころがせまくならないようにするために
さんすうだけでなくしもだいすきなものです
けいさんもだいすきです
すきなことがたくさんあるのでいっぱいべんきょうがしたいです
いつもそうかんがえています
すこしつくっています
とてもいいきもちになったときにつくっています
つくっていますがきいてもらったのははじめてです
小5の○○君と同じように、彼女のこの詩もけっして誰かに見せるために作られたものではない。自分のためにだけ作られた純粋な詩だ。そして、算数もまた、数のしくみのおもしろさを知る喜びだけに支えられた純粋な世界だ。
私たちが、まだ知らないとてつもないような世界を秘めた存在が、目の前にいる。
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2008年11月22日 22時57分
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小5の○○君。lクリスマスプレゼント、いったい何がほしいと書こうか迷いながら次のような結論にたどりついた。
もしかってもらえるならものがたりのびでおがほしいです
てれびでみられないものがたり
すぺーすわんだーらんどがおもしろかった
すぺーすふりーどろっぷというものがたり
とりっぷかもしれない
ともかくぼうけんものがいいです
今年は、自分の希望を聞いてもらった上でクリスマスプレゼントがもらえそうだ。
そして、話題は、最近担任の先生と取り組んでいる、手を介助されながら書く手書き文字に移っていった。
じをかくのはたのしいです
すばらしいとおもいます
ちいさくかくほうがかんたんです
きれいにはかけなくてもじぶんのことばがかけるのでうれしいです
ざんねんながらまだきもちをかくのはむずかしいけどいつかできるようになったらうれしいです
じがかけるようになったらこのぼくのきもちをじぶんのことばでひょうげんしてみせたいとおもう
きっとできるようになるとおもうのでせんせいよろしくおねがいします
「じぶんのことばでひょうげんしてみせたい」という言葉が、ふと、彼がすでに表現するものを持っているのではないかという気にさせ、詩とか作文とか作っているものがあるんではと尋ねてみた。するとこういう答えが返ってきた。
しをつくったことがあります
そして、時折スイッチを操作する手を止めながら、次の詩をさらさらと書いた。
たくさんのかなしみ
つらいときなみだがほほをながれたら
そらをみてかおをあげてみよう
ほほをながれるなみだもきえていく
ゆめみてみよう
きれいなときのしらないせかい
ふしぎなこえがきこえて
きてのはらにはないっぱいさきほこり
ちいさいころのおもいでがよみがえり
なみだはやがてそらにきえていく
周囲からは、まだ、言葉を理解する力があるかどうかを疑われている彼だが、こんな深い詩の世界を持っていた。あえて聞かなければ書くこともしなかったこの詩は、しかし、即興で書かれたものではない。何かのかたちで、彼は、この詩を胸の中であたためていたのだ。おそらく、誰かに伝えるためではなく、自らに語りかけるために。「たくさんのかなしみ」からどうやって起き上がればいいのか、自問自答しつつ、自らを励ますために作られた、作為のない純粋な詩だ。
とてもうれしいぼくのなかにかくされていたことばのせかいをほりおこしてくれてありがとうございます
子どもたちの中に隠されている奥深い世界の一端をまた、かいま見てしまった。クリスマスプレゼントの話をしている屈託のない彼とは、またちがう、ぐっと大人びた顔した彼がそこにいた。
ところで、この後に来た☆☆さんも、同じ質問をしたら「このせかいにうまれて」という詩を書いた。それは、また、別に紹介するが、その彼女に、○○君の上の詩を見せた。すると、こんな感想とメッセージが返ってきた。
すてきなしですね
どこのそらなのでしょうか
のぞみがきえてしまわないようにがんばろうとつたえてください
わたしもおなじきもちです
詩を通じて二人が心を通わせ合ったすばらしい瞬間だった。
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2008年11月22日 22時47分
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