ニックネーム:柴田保之
性別:男
年齢:56歳
障害の重い子どもとの関わりあいと障害者青年学級のスタッフとしての活動を行っています。連絡先は yshibata@kokugakuin.ac.jp です。

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2008年12月16日(火)
きせつとからだがあしなみをそろえてくれないので…
 高校生の女の子から、生活の現実の中での、季節に対する思いを聞かせていただいた。しっとりとした表現で、体のきつさが伝わってくる。後で聞いたことだが、先週も熱を出して大変だったとのことで、そのことも語られている。

つかれていますががんばります。
ひかくてききせつのあゆみがおそいのでいいけれどさむいきせつはいやです。
いいきせつはあたたかいはるみたいにつらくないきせつです。
きせつによってはからだがきついです。
きもちがいいのはいいきせつです
きせつしだいでからだのちょうしがかわるのでつらいです。
きこうのへんかがあるのはいいことですがじぶんにとってはつらいです。
くるしかったです。きぶんがすぐれなくていちょうのぐあいがわるくてもどしたりくだしたりしてたいへんでしたし たべれなくなってからだがよわってしまいました。
きせつとからだとがあしなみをそろえてくれないのでじぶんにはこまります。
にほんはしきがあっていいくにですが からだのよわいこどもにはつらいです。

 その後、スイッチをお父さんと挑戦してみた。

おとうさんだいじょうぶかなつきあってくれますか。

 名前の6文字のうち、2文字がお父さんと一緒に綴れた。そして、再び私と代わって、お父さんとできるようになることに対して、彼女の思いが語られた。

きぼうがわいてきましたきたいしています。
きもちがつたわればうれしいです。
すてきですきもちをことばでつたえることは。
がんばりたいとおもいます。おとうさんよろしくおねがいします。

 そして、最後に丁寧な言葉が添えられた。

しばたせんせいことしもありがとうございました。
らいねんもよろしくおねがいします。
2008年12月16日 09時50分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
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しずかなしずかなよるでした つきのきれいなよるでした
 小学4年生の少年が、切ないばかりに美しい言葉を綴った。

きのうしらないひとがきていいました
きぼうというものはじぶんでみつけよう
きぼうのひかりをしっかりともしていきていきましょう
しらないひとはいいました
いきていくのはたいへんだけどちゃんとまえをみていきましょう
しらないひとはいいました
きぼうのひかりをなんどでもともしていきましょう
しらないひとはいいました
きぼうのときをたいせつにいきていきましょう
ちいさなひかりでもきっとおおきなきぼうにつながっていますからたいせつにしていきましょう
つきのきれいなよるでした
にわにはきぼうのひかりがさしていました
つきのきれいなよるでした
きぼうのひかりしずかにさしていました
きぼうのひかりちいさいけれどしずかにさしていました
しきりにしずかなよるでした
しずまりかえったよるでした
きぼうのひかりがしずかにさしていました
きをつけてよくみているときぼうのひかりはきれいなりりしいわかものにかわっていました
きれいなつきのよるでした
しずかなしずかなよるでした
きぼうのひかりがよくさしてしずかなしずかなよるでした
きぼうのひかりのしずかにさしてきぼうのひかりにかこまれてしずかなしずかなよるでした
つきのきれいなよるでした
きれいなつきのよるでした
きれいなつきのよるでした
いいわかものがつきにむかってさけびました
しずかなしずかなよるでした
きぼうのひかりのさしているしずかなしずかなよるでした
きぼうのひかりはきっといまでもさしているでしょう。

 繰り返しが、心地よく、読んでいる者の心の中に、静かな月の夜を、鮮やかに現出させる。おじいちゃんが読んでくれている物語が彼の中に育んだ調べなのかもしれない。
 以下は彼の感想だ。

いいきもちです
すらすらきもちがかけてきもちがそのままぶんしょうになっていくのでらくです
じぶんでやっていないのにどうしてことばになるのですか
ふしぎです
ひかりのしがかけてよかったです
らいねんもよろしくおねがいします
ことしもたいへんおせわになりましたさようなら

 年の瀬のひととき、不思議な光の世界に引き込まれた。来年、少年は、どんな世界を描き出すのだろう。
2008年12月16日 00時43分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
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自傷について・・・・「わからない かってにうごく」
 両手のこぶしで頭をなぐってしまう自傷行為に苦しめられてきた青年が、文字を綴った。関わり始めたのが小学部の3年生の頃。現在は、高等部を卒業し、通所施設に通い始めて2年目になる。
このグループには、二人の肢体不自由のお子さんがいて、パソコンで文章を綴っているが、彼には、ワープロはなかなかうまくいかず、彼の好きな歌のソフトを楽しんでもらっていた。しかし、この日は、意を決して挑むことにした。手には特別のマヒなどがあるわけではないので、手にスライドスイッチの取っ手を握らせようとすると、拒んでくる。いつもなら、この辺であきらめるところだが、プッシュスイッチに代えて、手を添えて押そうとするとやはりいやがる。それならと、肩の側面にプッシュスイッチを軽く押し当てたり離したりして、反応を読み取ることにした。そして、いっしょに名前を書いてみる。なんと、その行や文字のところで、わずかながら体全体をスイッチ押しつけるようにして合図を送ってくるのである。こんなことをしたのはまったく初めてのことだ。そして、以下の文章が綴られた。( )で添えているように、彼には聞きたいことがいっぱいあったので、対話するように進めた。その背景には、彼がこんな方法で気持ちを表現することへの、無意識の不安があったはずだ。対話を通して、彼自身が語っているという実感がほしかったのだ。

うれしい きすしたい
きもちがつたえたかった
かあさんいつもありがとう いついつまでもげんきでね
きやすくきもちがいえてうれしい きぶんがいい
(手はどうしていやなのですか?)
て いたいかんじがする
(どうして自傷をしてしまうのですか?)
わからない かってにうごく
(文字はいつ覚えたのですか?)
ちいさいときからしっていた
いいきもち ちいさいときからはなしたかった
(どうして☆☆ちゃんが帰ったとき怒ったのですか?)
もっといてほしかった
きもちがつたえたかった
(H先生へメッセージをお願いします)
かわいがってくれてありがとう
(K先生にもメッセージをお願いします)
かまってくれてありがとう
じぶんのきもちをつたえることができてうれしい じぶんではんだんしていきてないのでくやしい
ふしぎ ぼくしかかんがえてないことばがどうしてわかるの きもちがつたえられるとはおもわなかった きもちをつたえられてかんげきしています じぶんのきもちをつたえたかった
(音楽について教えてください)
きもちがおちつくからすきです かんどうします いいおんがくをきくと いつも
(おかあさんにもう一度何かあったら書いてください)
ありがとうかんしゃしています ひかえめなせいかくだけどまっすぐなところがすてきです きもちがやさしいからすきです
(来る途中、立ち止まるのはなぜですか?)
すきなくるまがみたいからです
(やっぱり手はいやですか?)
てはむずかしそうです きもちがつたえられてうれしかった
(▽▽君について)
ちいさいときからいっしょだったからともだちです
(お母さんからのご希望で、おねえさんについて)
きれいになったからうれしいです きれいなおねえさんがだいすきです きれいなかおをたいせつにしてください

 かたわらで母さんは、彼の言うとおり、控え目にじっと様子をご覧になっていて、目にいっぱいの涙をためておられた。H先生もK先生も、彼が学校でお世話になった素敵な先生。この会の発足時からのメンバーだ。小学3年から関わり始めて、卒業後1年半の年月を経て初めて明かされた彼の内面の吐露に、拍手喝采だった。
2008年12月16日 00時41分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
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