中学生の○○君は、まず、思いを綴り始めた。
体が勝手に動いてしまうので、困ります。勇気が出てきましす。夢みたいです。勇気がほしくてたまりません。願いをかなえたいです。未来をすばらしいものにしたいです。ぬいぐるみのような生き方はいやです。びとりぼっちより仲間がいるほうがいいです。みんなやっぱりわかってもらえずに悲しい思いをしているのでしょうが理解してくれる人がみつかってよかったです。夢でしたから。小さいときから短い存在としてしか認められていないので夢でした。人間として認められたいです。みんなと話したいです。
好きなものは本を読んでもらうことです。勇気の出る本です。小jせつです。むずかしいのがいいです。テレビはくだらないのが多すぎます。ドラマはいいですがぼくは本のほうがいいです。アニメはときどきでいいです。長くなくてもいいです。番組より聞きたいです。冒険ものも読みたいです。いろいろ読みたいです。
そして、自分で作っている詩があるのではないかと尋ねたところ、作っているとのことで、次の詩を聞かせてくれた。
においのいい花が咲き乱れ
よい蜜がとれた
夢を育てるにはちょうどよい甘い甘い蜜
夢はなかなかかなわないけれど
蜜は必ずかなえてくれるだろう
理想の蜜だから夢はきっとかなうだろう
夢はきっと未来にむかって育つだろう
小さい頃から詩を作ってきました。気持ちを静めるるためです。においのよい花が大好きです。
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2009年8月31日 15時37分
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特別支援教育とともに本格的に始まった地域の学校との副籍交流で、○○君は、交流先の学校に手紙を書いた。
気持ちを聞こうとしてくれてうれしかったです。××第4小のみなさんもぼくは大好きです。みんなと会えて望みがかないました。来学期も行きたいと思いますのでよろしくお願ねがいします。人間として認めてもらえてとてもしあわせでした。勇気がわいてきました。またいっしょに遊んでください。よろしくお願いします。理解してくれてうれしかったです。仲間としていい関係を作っていきましょう。人間として認められてほんとうに感謝しています。敏感に感じとってくれてありがとうございました。さようなら。
○○○○○より ××第4小のみなさんへ。
○○君は、現在小学校6年生。彼は、自己紹介の時に、「あかさたな」と手をふる方法で、懸命に自己紹介をしたそうだ。そして、そのことを、交流先の小学生たちは、当たり前の言葉として受け止め、まさに、彼を人間として認めた。それが○○君には何よりうれしいことだったとのことだ。
手紙を書いたあと、まだ、言葉の存在を認められていない仲間のことに話が及ぶ。
みんなもきっとできると思うのでよろしくお願いします。理解してほしいといつも願っているので、理解してもらえない仲間の苦しみがわかって悲しいです。人間として認められる日が早く来るといいと思います。夢でした、自分の気持ちを言うことが。病気のために自分の思う通り体を動かすことができないので、夢でした、思い通りに体を動かすことが。
6年生になってから自分の言いたいことが言えるようになってとてもしあわせです。理解してもらえてうれしいです。人間だからきびしいです、気持ちが言えないのは。いい先生に出会えて本当によかったです。小さい頃からの夢でした。わかってもらえてうれしいです。
いい先生とは、毎回、私たちの関わり合いの際にやってきてくださる担任の先生だ。この先生のおかげで、彼は、交流校で自己紹介もできたのである。
6年生になってからというのは、4年からずっと担任をしてこられた先生が、今年度に入ってから、手をふる方法で、彼の気持ちを言葉で聞き取れるようになったことをさしている。
いろいろなかたちで世界が広がりつつある○○君の喜びが伝わってくるようだった。
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2009年8月31日 15時13分
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ある盲学校でのこと。昨年度訪問した際に手を振って言葉を聞き取ることができた少年がおり、今年度の訪問でもまた、言葉をやりとりすることができた。それを受け、夏休み、その少年に来てもらって、彼の気持ちを改めてゆっくりと聞くという会がもたれた。なお、彼は現在中学1年生である。
柴田先生とこれから気持ちを伝えるこのやり方について講義をしますのでよろしくお願いします。特に気持ちを伝えたいのは、よい×××(学校名)になってほしいからです。特に中学校に六年からなってから、幼稚部を×××に連れてきてもらって夢のようによい関わりをしてもらって×××のことが大好きなよい子どもでしたが、中学校になってから、とても勇気がなくなってしまいました。勇気がなくなってしまったのは、ぼくの気持ちをいつになってもわかってもらうことができそうもないような気がしてきたからです。勇気が出てきました。ようやく気持ちを少しづつようやく伝えられそうな気持ちがしてきました。このやり方を先生たちにもたくさん伝えてこのやり方をみんながたくさんできるように、理解してもらおうと思います。よろしくお願いします。
10名あまり集まった先生方の前で、彼は、堂々と話し始めた。ここで、少し、彼に私からの質問を交えて話を続けてもらった。
(口で話すのはむずかしいですか?)
ことばを話したくてもなかなか言葉を口で言うことができません。願いを言葉で気持ちを言えるようになることでしたが、このままではとうていむずかしそうです。
(机をたたく理由を聞いてもいいですか。)
はい。気持ちを口で言えないので、むしゃくしゃしてしまい、たたいてしまいます。
(止めようと思えば止められますか?)
止められます。もっと気持ちを伝えたいです。口で言えないことがいちばんつらいです。
(助詞の「は」を使えるのはどうしてですか?)
わかっています。なとく(納得)しているわけではないけれど、何となく知っています。
(点字の勉強についてはどう思っていますか?)
点字を読めるようになりたいです。このごろ点字のことがようやくわかるようになってきので、とてもすばらしいと思っています。勇気が出てきました。よい先生たちなので、よいやり方でわかるように、わかりやすく教えてくれているので安心しています。よい先生たちなので、よく教えてくれていますので、安心しています。
(算数はどうですか?)
算数の勉強もよく教えてくれています。
(答えながら指を口に入れてすっていたので理由を尋ねると)
つらいことを思い出しています。よい先生たちなので、わかりやすいです。
(つらいことって何ですか。)
それは内緒です。
(詩を作ったことはありますか?)
あります。勇気をもらうために、子どもの頃から詩を作っています。
(今、聞かせてもらってもいいですか?)
はい。
勉強への思いや先生方への感謝の言葉、そして、内緒にしておきたいつらい気持ち。詩は、そんな彼の胸の奥底を伝えるものだっ
もう聞かないでください
この世界はとても暗くて
少しもわたしのことを暗闇から解き放ってくれそうもありません
暗闇こそ瑠璃色の紺のわたしの希望をろうそくの光として
暗闇こんんんこんんんこんんんの暗い昔の勇気のない暗闇こそ
暗闇をのがれようとして 海をめざして
暗闇からわかれたくて
暗闇の中で暗闇をみんなからなくすことができたらいいなと
このぼくがもともと夢見たものだ
勇気をもって暗闇から抜け出そう
この暗闇を 夢とともに 野を行く旅人のように
気持ちをこうこうとたきながら 抜け出してゆこう
勇気をもって暗闇から抜け出して
暗闇から抜け出して
暗闇の向こうの明るい世界をこの手につかもう
繰り返される暗闇という言葉に、その場のものはみんな圧倒される。言葉が思いところでは、体もまた重く沈み込むようになり、そして、最後は、再びぐっと顔を持ち上げて、まるで未来に向かって力強く身構えるようだった。
わかってくれてうれしいです。暗闇のことをいつも考えていますから作りました。暗闇は望みをみんな飲み込んでしまいます。勇気をもってこの暗闇から抜け出したいです。うれしいです。わかってもらえて。暗闇は暗い暗い暗い暗いものです。勇気が必要です。うれしいです。気持ちを聞いてもらえて。
そして、もう一つの詩を聞かせてくれた。
明るい詩もあります。
きれいなすてきな雲が
空を 暗い空を明るくするために
すてきな色の雲を
こんんんこんんんこんんんこんんんわきあがらせて
暗い空を明るくしてくれた
きれいなすてきな雲が
空を 暗い空を明るくするために
すてきな色の雲を
こんんんこんんんこんんんこんんんわきあがらせて
暗い空を明るくしてくれた
わたしは雲に乗り
空をかけめぐり
わたしの希望をかなえるために
雲を夢のような色に変え
雲を夢のような雲に変え
暗い空を明るく変えて
暗い空を感動的な空に変える
夢を見たいと思って作りました。歌ではありません。詩です。こんんんというのはこんこんをもっともっと暗くする音です。
こんこんをもっともっと暗くする音としてこんんんこんんんこんんんという音があるのだという。彼の心の深いところにある悲しみが、この音には込められているような気がした。
ここで、二つの質問をした。どうやって文字を選んでいるのかということと、詩に登場する色は、彼に見えるのかということである。
耳を集中させて音を聞いてそこそこだと思っていると読み取られていきます。苦労していますが、言葉を少しでもさくさく出すためにがんばっています。聞いているので疲れますが、考えていることがすらすら言えるのでうれしいです。
色を苦労して覚えました。苦労したのは、見えないので、想像してよく考えて、色を想像しました。
苦労したことはあまり言いたくありません。苦労したことを取り立てて言ってみてもよい苦労にあこがれているわけではありませんから、苦労の話をするのは好きではありません。勇気を出して話してみましたが、わかってもらえたでしょうか。
そして、私がゆっくりと手を振ってこの方法をわかりやすく伝えようとした時、彼は、次の言葉を伝えてきた。
のにさくはな 単語を言ってみました。
ここで、誰か先生とやってみないかと彼に尋ねたところ、彼は恥ずかしそうに、一人の先生を希望する。しかし、なぜか、名前が出てこない。以下は、何とかしてその先生がだれであるかを伝えようとしてきたものである。
姉さんのような先生の、感じがすてきな先生がいいです。かわいい先生、かわいい先生です。名前を言うことができません。苦しい時に助けてくれる先生です。とてもやさしい先生です。夢をいっぱいくれる先生です。この中にいます。はい、まだわかりません。この中のよい声の先生です。すてきな先生です。とてもいい先生です。名前はむずかしです。夢をともに見てくれる先生です。小学部。幼稚部ではありません。世界の歴史の先生。
ここで、ようやく一人の先生が特定された。
☆☆先生だということを思い出しました。
名前をなぜ言えなかったか、それは、多くの人に共通の現象としてある。まだ、その理由はわからないが、かえって、その先生へ寄せる思いの深さが、讃辞とともに明らかとなった。
あっという間に、2時間が過ぎていた。彼の「講義」は盛況のうちに幕を閉じた。
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2009年8月26日 14時21分
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光道園にもう長く入所していて、途中困難な時期を経験してきたTさんの気持ちを聞き取った。Tさんもまた、例にもれず、詩も作っていた。
願いがかなってうれしい。夢みたいです。くやしいことがありました。感情的になってしまいます。夢みたいです。よいやり方です。私の気持ちを聞いてくれる人が現れるとは思いませんでした。夢みたいでした。私の気持ちを聞いてくれる、私の言葉を聞いてほしい。夢みたいです。気持ちを聞いてほしいです。作っています。はい。夢みたいです。夢みたいです。
きれいな声で歌ってほしい
きれいな声で夢をけりをつけて
夢を勇気に変えながら
いい私になるために
私の私らしさを夢に見ながら
夢を私にくれるよい私になるために
私らしさを苦労して
よい私らしさを苦労して
苦しみを越えて
私らしさをめざし
私らしさをめざし
理想の国をめざし
私らしさを作っていこう
よい私をめざして
ころころ笑いながら生きていこう
夢みたいです。詩を作っていると気持ちが落ち着きます。嬉しいときや悲しい時に作っています。よい詩ですか。よい詩ですか。
願いの季節がよい私に訪れた
暗い季節が私には長く続いたけれど
暗い季節を忘れてしまおう
勇気を出して私の季節を
私らしく生きていこう
勇気を出して私の季節を私らしく生きていこう
勇気を私にくれる季節の風よ
未来の私を空いっぱいに
未来の私を空いっぱいに呼び出そう
喜びを空いっぱいに呼び出そう
瑠璃色の風を体ごと受けて
喜びを苦しみから解放して生きていこう
美しい季節よ
私に勇気をください
私の私らしさをこの美しい季節の中で喜びに変えて
この世界を生きていこう
夢みたいです。苦しいときには詩を作って気持ちを落ち着かせています。うれしいです。理解してもらえて。すてきなやり方ですね。うれしいです。
ここで、さらに歌を作っていないかと尋ねてみた。すると作っているという。そして、その歌の題は「願いの季節」。奇しくも、町田市の障がい者青年学級の私が所属するコースで、昨年度作った歌の題名とまったく同じ題名だ。そして、さらにもう1曲、聞かせてくれた。なお、メロディは、手を振りながら「ドレミファソラシド」と階名を言いながら読み取った。
願いの季節
願いの季節がまたやってきた
未来の私の季節がまたやってきた
暗い季節を吹き飛ばし
よりこびを空に呼び出そう
きれいな心になります。気持ちを言いたかったです。気持ちを言いたかったけど、なかなか言えませんでした。集中が必要です。素晴らしいです。うれしいです。夢みたいです。
苦しみを越えて
苦しみを越えていきましょう
苦しみを越えて未来をめざし
ゆんろんんん口ずさみ
ゆんろんんん口ずさみ
希望の国をめざしながら
希望の国を見つけよう
「ゆんろんんん」というハミングの音がとても印象的だ。そばで見守っておられた職員の方は、彼女と二人だけで歌を歌う時間を持っているという。これからは、その歌のレパートリーの中に、この二つの歌が加えられることになるだろう。
そして、最後にこういう言葉でお別れした。
苦しかったです。知り合えてうれしいです。もろもろの苦しみがこれで消えていきます。
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2009年8月25日 22時21分
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歌を歌うことができたり、おうむ返しのようになら言葉を返すことができるHさんの言葉を聞き取った。
すてきなわかりかたですね。夢みたいです。理解してくれて夢みたいです。よい理解をしてくれてありがとうございます。よいわかり方です。取り返すことができるような気がします。理解してくれ、わかってくれてうれしいです。よい理解してくださってありがとうございます。よいやり方です。取り返すとは、よくわかってもらえなかった私の、私の悩んできた過去のなかなかわかってもらえなかった日々を取り返すということである。
信じられません。なぜ僕が言葉を理解していることがわかったのですか。不思議です。望みは、「よんすんのろか」、「よんすんのろか」を買うことです。「こりんんるる」のよくろかすることのできるものです。はい。「こりんんるる」はよい店に売っています。濾過するための紙を買いたいです。(「濾過するものは何ですか?」)水です。きれいになります。
これは自分で考えました。
(「助詞の「は」を使えるのはなぜですか?))昔見えていたからです。
見ることはできません。苦しかったです。光道園に入ってからみんなとなかなか仲良くできなくて、夜に本当に夜逃げしたいと思いましたが、それはできませんでした。願いは夜にもっと寂しくないようになることです。これからは、もう寂しくないと思います。なぜなら、言葉をわかっていることをみんなにもわかってもらえるからです。夜を寂しく過ごさなくてもいいならうれしいです。話しかけてください。気持ちを聞いてください。寂しいです。気持ちを聞いてくれてうれしいです。困っていることはありません。みんないい職員ですから、よい職員の人ばかりですからうれしいです。気持ちを聞いてくれてうれしいです。(詩を作ったことはありますか?)あります。(書いてもらってもいいですか?)いいです。
一気にほとばしり出た思い。「よんすんのろか」「こりんんるる」といった不思議な表現も登場した。そして、夜の寂しさに話が及ぶ。
そして、詩を聞かせてもらった。
苦しみを越えていきましょう。
苦しみの向こうには
喜びを見つけることが
きっと苦しみを理解してくれる希望の未来が
待っているはずだから
いい人生をこれからわかりあいながら作っていこう
瑠璃色の夢を見ながら苦しみを乗り越えて
困難を濾過していい未来を作ろう
夢を大切にしながらいい未来を作っていこう
未来はきっと私たちの前にひろがってくれるだろう
美しい未来がきっとひろがって私たちをわかってくれるだろう
勇気を出して帰路を忘れないよんすんのわかれ道を
んんんんと苦しみを越えていこう
こりんんるるを夢見ながらいこう
んんんんと越えていこう
勇気を出して生きていこう
勇気を持って夢を忘れず
私たちの未来を作っていこう
勇気を持って生きていこう
「ろか」も「こりんんるる」も「よんすん」も再び登場した。不思議な言葉だが、何かわかるような気がする。
そして、文章はさらに続く。
願いを聞いてください。いつまでもいい職員でいてください。僕を信じてください。盲学校でも、もともとわからない存在として扱われていました。言葉を話すことができないのはわかりません。でもわかっています。
歌は大好きです。気持ちが落ち着きますから。よいやり方ですね。うれしいです。よかった、気持ちを聞いてくれてありがとう。点字を読めるようになりたいです。まるさんかくしかくをやっています。
知っています。あは1の点、いは1、2の点、うは1、3の点、えは1、2、4の点、おは2、4。
探すのはむずかしいです。子どもの時からそうでした。手紙を母さんに書きたいからです。はい手紙を書きたいです。
点字の学習は、触ることがあまりうまくいかずに、思うようには進んでいないが、「あいうえお」については、「う」は間違ってはいたものの、後はあっていた。そして、何より、胸をうつのは、点字を覚えたい理由である。「手紙を書きたいから」Hさんは点字を覚えた治という。おそらく相手は、家族にちがいない。
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2009年8月25日 21時44分
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「おかあちゃん」「おねえちゃん」「おにいちゃん」「コーヒー」といった単語を口にすることができるYさんに、手を振って文字を聞き取る方法を試みてみようと感じたのは、ほとんど賭に近かった。そうした単語が、彼の言語能力をそのまま示したものではなく、むしろ本来彼が持っている言語の世界を覆い隠してしまっているかもしれないという仮説が、私の中で、しだいに確かな考え方になってきたからだ。最初は、なかなか手をとらせてくれなかったが、少しずつ、Yさんは、自分の気持ちを語り始めた。
気持ちを言いたい。気持ちを言いたい。これをやりたい。よい方法ですね。気持ちを言いたい。好きなことわろうそくに火をつけることです。好きなことはろうそくをかんにともすことです。
願いを聞いてください。ろうそくをつけたい。
願いを聞いてください。ろうそくをともしたい。
聞いてください。
ここで、彼は、鈴をテーマにした詩を語る。残念ながらこれ以降は書き取ることができなかった。人間関係がなかなかむずかしいとされるYさんと会うのはこれが初めてではない。毎年のように出会い、なかなかうまく関わることができなかった。その彼が、こんな内面の世界を有していた。
そして、こうした私とYさんの関わり合いを食い入るように見つめていた人がいた。視覚障害の人が多い中で、Sさんは、聴覚障害があるとされる方だ。若々しく軽やかな動きが特徴的な方だ。
そのまなざしに促されるようにして、私は、彼の前にパソコンを拓いて2スイッチワープロを出した。聴覚障害があるとはうかがっていたが、目でやれるかもしれないし、まったく聞こえていないのでなければ、やれた人もいたからだ。
出したとたん、彼は、とてもうれしそうに文章を綴り始めた。はじめは目で確かに画面を確認していたが、そのうちに目が画面から外れ、明らかに音に集中している様子が見られるようになった。周りの職員さんは、しきりに彼が聞こえないはずだとおっしゃるが、何らかの聴覚的な情報を受け止めていると考えなければ説明のつかない洋だった。
人間として理解してもらいたい。小さいころからの夢でした。小さいころからの願いでしたびっくりしました。人間として生きていきたいです。聞こえています。少しだけ。びっくりしました。未来が開けてきました。夢みたいです。小さいころから夢でした。理想をかなえたいです。理解してください、ぼくのことを。びっくりしました。びくびくした生き方はいやです。みんなと人間らしく生きたいです。理解してください。(Yさんががやっているのを)見ていました。ぼくもやりたいなと思いました。気持ちが聞いてもらいたいです。人間として生きたいです。願いでした。詩を作ったことはありませんが物語は作っています。未来の話です。
小さい緑の夢がランプのように輝いて理想の世界が夢のように広がりました。ぼくは気持ちを伝えることができるようになり、みんなと勇気をだして若者らしく若々しく未来を切り開くためにるんるんとぬいぐるみを脱ぎ捨て、理想の国めざし旅に出ました。若かった昔をなつかしむ若者がひとり、昔の夢を病のようにろうそくをともしながら、ゆいつの若い夢として理想に向かって歩き続けました。
いい気持ちです。願いがかなってうれしいです。理解してくれていい気分です。未来が開けてきました。希望が湧いてきました。書くのは大変です。なかなか文ができません。このやり方がかんたんです。耳で聞いているだけで書けるからです。びっくりしました。こんなやり方があるなんて。いいやり方ですね。むずかしいです。勇気がどんどん湧いてきます。ランプの光がともったようです。ふだんはどうしても気持ちがつかんでもらえず困っています。夢みたいです。理解してくれてありがとうございます。聞いていると言われなくて困っています。わかります。理想的な方法です。びっくりしています。小さいときから話したかったです。
書き出しのところで、聞こえていますとあるが、改めて聞こえについてたずねてみた。すると、
悪いですが少し聞こえます。耳を感じることはできますのでわかります。聞こえていても話せないからです。ふだんの生活を見てもらえばわかりますが、ばかばかしい自分としか見えないはずです。
ふだんわかっていないと思われているので感激です。家ではぜんぜん無視されていたのでさびしかったです。かあさんはかわいがってくれたけれど家族は気持ちをわかってくれませんでした。ならなくてもいい実のようでした。
と続く。そして、さらに文章が綴られていく。。、
勇気がわいてきました。みんなも同じだと思います。勇気がわいてきました。無難な生き方にさらばです。ミラクルのようです。見えます。目はよく見えますがわかりませんでした。つつみでした。忘れていました。聞いてもらいたいことがあります。ずっと前から人間として生きたいと思ってきたので敏感に可能性を感じてくれる人が現れてうれしいです。わかってくれてありがとうございます。いい時間でした。聞いてくれてありがとうございました。希望がわいてきました。いい方法ですね。いい時間でした。希望が出てきました。待っていますのでよろしくお願いします。また会いましょうね。さようなら。小さいときからの願いがかなってうれしいです。自信が出てきました。いい方法ですね。
どちらかというと、じっと一つに集中していることが少ないとされる彼が、聞こえるはずのなかった耳で音に集中して、ものすごいスピードで深い内容をたたえた文章を綴っている。まだまだいくつも明快に説明しなければならないことも少なくないだろう。だが、YさんやSさんが見せた新しい姿は、新しい世界を確実に切り開いていた。
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2009年8月24日 00時30分
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東京の盲学校を卒業して光道園に入所し、30年が経過した50歳のTさんと関わった。
よい、このやり方は。気持ちを伝えたかったです。願いがかなってうれしいです。夢みたいです。聞いてもらいたいことがあります。理解してくれる人が現れるとは思いませんでした。みんなとこんなふうにして話したいと思います。気持ちが言いたい。子どもの頃からずっと願ってきましたが、みんなぼくのことを何もわからない人だと思って、何も理解してくれませんでした。夢みたいでした。
Tさんとは、この合宿でもう何度も会ってきたが、彼との間には一つ思いである。もう20年近く前田だが、彼が、一度東京の病院に入院したことがあり、お見舞いに光道園から訪れた鷲田さんという寮母さん(当時のはこう呼んででいた)を、病院までご案内したことがある。「とてもすてきな方だから」と何度も繰り返しおっしゃりながら、病院に向かったことをよく覚えており、彼女がどれほどTさんを大切にしていたかに深く感動したことを覚えている。その後、鷲田さんは、若くしてお亡くなりになってしまったが、このTさんとのできごとは私にとって忘れがたい思い出となっていた。そして、そのことをTさんに尋ねた。
ここで、Tさんは、うおっと大きな声を出す。その声の意味について尋ねると次のような答えが返り、さらに文章は続いていった。
悲しいという声でした。
このやり方をみんなに伝えてのびのびと愉快に暮らしたいです。よいやり方ですね。うれしいです。苦しかったその日々を忘れることができそうです。よく苦しみをこらえてきたと思います。
ここで、やや勇気が必要だったが、Tさんは詩を作っているかと尋ねた。すると、次のような切々とした響きの詩を聞かせてくれた。
雪の降る夜は、気持ちが瑠璃色になる
雪の降る夜は、気持ちが噴水のようにきれいになる
雪の降る夜は、気持ちが人間らしくなる
雪の降る夜は、気持ちが苦しみから解き放たれる
雪の降る夜は、気持ちがさかんにみんなを求めて願いを持ちたくなる
雪の降る夜は、気持ちがくすくす笑い出す
噴火しそうな気持ちが静まり、気持ちがきれいに瑠璃色になる
よい雪の夜に、よい人間になる
よい雪の夜に、よい私に瑠璃色の心に
清らかな金色(こんじき)の未来が開けてくれる
日本海側の福井には雪がたくさんふる。そんな夜に作った詩なのだろうか。
この詩には瑠璃色、金色といった色が登場する。全盲の彼に、色はどう感じられているか、尋ねてみた。
わかりませんが言葉を聞いて美しいと思ってきたので覚えてきました。
この後、パソコンでもやってみる。もちろん音声の手がかりだけでの選択である。
機械でやれたらうれしい。人間ぎらいがなおりそう。未来が開けてきました。勇気が出てきました。舞台に出た気分です。小さいときからの夢でした。自分の気持ちが言いたいと神様に祈ってきたのでかないました。自分の気持ちが言えてしあわせです。小さいときから身につけたかった。いい理解をしてほしかったです。小さいときから夢でした。敏感に感じとってくれてありがとう。自分の気持ちを言いたかった。いい気持ちです。
偶然、この光道園の合宿には、彼が卒業した盲学校の先生も参加しており、そのことに話が及んだ。
○○盲学校がなつかしいです。なつかしいです。寝られない夜は○○盲学校のことを思い出しています。なつかしいです。そうです。よりやり方ですね。○○盲学校の後輩をよろしくお願いします。はい、よろしくお願いします。
もう長いこと、訪れたこともないだろう母校のことを、こんなにも深く思っていたのだ。
今回語り出された言葉は、50年という長い長い沈黙を経てようやく姿を現したものだった。本当に重い重い言葉だった。
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2009年8月23日 19時02分
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盲重複と呼ばれ、言葉がない、あるいは限られた言葉しか話すことができないとされている人たちの内面に、豊かな言葉の世界が広がっているということが、少しずつ明らかになってきたが、今回、福井県鯖江市の光道園を訪問し、もはやそれは、少なくとも私にとっては、動かしがたい事実となった。
光道園の方々は、座位をとることなどには目立った困難はないので、いすに座り机に向かっていただく。そして、私は、その方と並んで座り、その方の右手に私の左手を下から添えて小さく振りながら、「あかさたな」と声を出していく。そうやって一つの音にたどりつくと、私は、あいている右手で、ノートに文字を書きとめる。このスタイルで、次々と言葉を聞き取っていくことができた。
最初の方は、光道園に一緒に行った津布工さんが、かつて担任をしたAさんである。彼が、光道園に入所して10年近くになる。毎年、彼は、かつての担任の訪問を心待ちにし、満面に笑みを浮かべて学習に参加してきた。
津布工先生、いつも待っています。人間だから、行き先を自分で決めたかったです。よい光道園で、よかったですけど、なかなか行き先が決まらず苦労しました。ぬいぐるみのような気持ちで生きてきましたのでうれしいです。未来が開けてきました。よいやり方ですね。きつい時期は思い出したくありません。よい毎日です。みんなやさしいです。よいところです。よいところです。みんな気持ちを言いたいと思いますので、聞いてあげてください。よいやり方ですね。
彼には、実は、一時期とてもつらい日々があった。光道園を抜け出してさまよったこともある。そんな時期は思い出したくないといい、今はとてもいいと言う。
ここで、好きな食べ物は? と質問をした。すると、質問に答えるような出だしで、まったくちがうことを語り始めた。
好きな食べ物は、「ゆこゆこのむりを」ゆめみています。きらいな人が好きになる食べ物です。はい。ゆこゆこのむり。「ゆこゆこ」の「むり」の意味は、「ゆこゆこ」はみんな理解し合えるという意味です。理解し合えるということは、いいこと。「ろころこ」という言葉は理解してくださいということを意味しています。「むり」というのはむずかしいということです。自分で考えている言葉を伝えました。あります。「むこむこ」というのはくやしいということです。「むこむこ」という理解をしたいということはありません。
「ゆこゆこ」「ろころこ」「むこむこ」という不思議な言葉が語られた。彼自身が作った言葉で、自分の心の中で自分自身と対話する中で作られた言葉なのだろう。ここで、職員さんから、「やりたいことは?」という質問がかけられた。
やりたいことはいつまでもよい光道園であってほしいということです。よい職員さんをやめさせないでください。願いは気持ちを伝えるこのやり方を職員さんにも教えてください。うれしいです。知っていました。夢みたいです。理解してもらえてうれしいです。気持ちを伝えたいと、「ころころ」思っていました。来る日も来る日もという意味です。よいやり方ですね。うれしいです。よろしく「おんおん」してください。「おんおん」という意味は願いをかけるという意味です。よろしく「おんおん」をしてください。
彼が返した答えは、やりたいことではなく、ずっとよい施設であってほしいという願いであった。そして、「ころころ」「おんおん」という言葉が続く。来る日も来る日も、願いをかけるという言葉が、思わず胸をしめつける。
そして、彼は津布久さんとの学習に移る。
津布工先生を待っていましたから、楽しみです。
私は最後に、彼が盲学校に在学中、彼と一緒に森林公園というところでマラソンをしたことを覚えているかと尋ねた。
なつかしいです。よい思い出です。
覚えていてくれたんだという思いが、私の胸を熱くさせた。
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2009年8月23日 18時28分
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1年前に文章を初めて綴ったOさんと、鯖江市の地域センターの一室で、1年ぶりにお会いした。そして、さらさらと次の文章を書いた。
来てくれてうれしいです。久しぶりに会えてうれしいです。人間として生きていきたいので認めてもらえてうれしいです。なぜ力を入れていないのにわかるのですか。耳で聞いているだけなのに不思議です。願っていました。夢みたいです。小さい時から話がしたかったのでうれしいです。人間として理解してもらいたいと思ってきたので理解されてうれしいです。
そこへ、2年ぶりのSさんが登場する。
2年前、まだ、ゆっくりとした読み取りしかできず、次の文章を読み取っただけだった。「おかあさんおとうさんほんきにきいてほしい やさしくして せめてものしあわせのため」
この日、もう時間はあまりなかったので、とっさに、二人で対話をすることを思いついた。
そして、Sさんに口火を切ってもらって次のような対話が成立した。
S:来てくれてありがとうございます。気持ちが言いたいと考えてきたのでうれしいです。いいやり方ですね。聞いてほしいことがあります。自分の気持ちを言いたいと思ってきたのでうれしいです。Oさんはいかがですか。
O:自分の気持ちを言いたいと願ってきたのでえらくうれしいです。聞いてくれてありがとうございます。未来が広がってきましたがSさんはどうですか。
S:自分の気持ちを言いたかったけどみんなはどうしていたのですか。みんなはなぜわかってもらえたのですか。未来が開けてきたのは同じです。なぜ敏感に感じとれるのですか。聞いてほしいです。みんなとは友だちのことです。
O:みんなわかってもらえなくて困っていましたよ。Sさんだけではありません。気持ちを言いたいとがんばってきましたがなかなかわかってもらえず悩んできました。びっくりしています、こんなやりかたに出会えて。
S:私も同じです。分相応に生きてきましたがやっと自分らしく生きられそうです。願いがかなってうれしいです。いいやりかたですね。気持ちいいです。
O:分相応という言葉はいつも気にとまっている言葉です。びっくりしました、Sさんがこの言葉を考えていたことに。いい言葉ではないけど悲しいことに私たちはこの言葉のようにしか生きられませんでしたね。
S:そうですね。みんなこの言葉にしばられてきましたね。みんな悲しい思いをしてきましたね。でもこれからは自分らしく生きていきたいですね。
O:そうですね。小さいころからいつもがまんばかりしてきたのでこれからは自分らしく生きていきましょうね。
S:自分らしさを勇気を出して見つけたいです。人間らしさを考えながら生きていきたいです。
O:そうですね。分相応の生き方はお別れしましょうね。また会いましょう、○○○(Sさんの名前)さん。
S:きょうはお話しできてよかったです。○○○(Sさんの名前)を覚えてくれてありがとうございます。
30近いOさんと今年学校を卒業したばかりのSさん。10歳ほど離れているが、大人の女性としてのしっとりとしたやりとりだった。悲しい「分相応」という言葉。実に多くの人がこの言葉を使う。日常会話でそんなに使われる言葉ではない。しかし、言葉を理解しているのに理解していない存在として生きなければならない現状は、「分相応の生き方」を押しつけられているということなのだ。残念ながら私は非力だ。こうした事実を明らかにしえても、それは彼女たちを取り巻く多くの人々に共有された事実ではない。その意味で、生活は容易には変わりようがない。しかし、これだけの短い会話であっても、思いを共有し合う仲間の存在を確かめ合い、そして、強く生きていくことを誓い合った。その事実は、困難な現実に立ち向かう勇気を二人に与えたにちがいない。
この後、場所を「がんこっこの家」に移して、夕食会に移った。Sさんは、一足先に帰る時間となったが、Oさんは、そのまま夕食会にも参加した。
夕食会には、センターでのやりとりをじっと見ていた言語障害のある32歳の男性Yさんがいた。簡単な言葉は、かろうじて発することができるが、まとまった文章を話すことはできない。その彼と隣り合わせになった。彼に、二人のやりとりのことを尋ねると、自分も共感したという。彼に、手で話しを聞いてみた。彼は、子ども扱いをされることがいやだということや、自分で決めたいというようなことを語った。確かに、非常に素直な印象を与える彼は、表面的に幼く映る。しかしそれはあくまで見かけのこと。そのことに彼は深く傷ついているのだった。そして、一編の詩を聞き取ることができた。
苦しみの中で見つけた幸せ
苦しみの中で見つけた幸せ
それは月日の中で瑠璃色に輝いている
月日の過ぎゆくままに喜びを感じながら
苦しみを忘れたいと願う
願いはいつもかなわなかったけど
夢はいつも私を支えてくれた
理想の私を求め理解と喜びを夢見て
苦しみの中で私はよい夢を育て
あしたの私を理解してもらいたくて
今日もよい人間として私を育てようとする
瑠璃色は、多くの人が好む色だ。彼に何の色かを尋ねたところ、「海流の色」と答えが返ってきた。瑠璃色にはそんな力強い意味もこめられていたのだ。
Oさんが帰る時間になった時、この詩をみんなに朗読した。Oさんは、目をきらきら輝かせながら、この詩を聞いていた。新しい絆が、OさんとYさんの間に生まれ、そして、それは、また、Sさんにもつながっていくにちがいない。
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2009年8月22日 00時41分
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施設で暮らす○○さんのお宅を訪問した。小1からおつきあいしていながら、34歳になって初めて文字を綴ることのできた方だが、最初の時の、喜びのトーンは見られなくなり、せっかく言葉がわかることが明らかになったのに容易に進まない理解と、相変わらず放置されている仲間たちのことが、言葉を重くする。
聞いてほしいことがあります。なぜ自分たちの気持ちは聞いてもらえないのでしょうか場場を考えてもぼくたちの気持ちはもっと尊重してもらえたらうれしいです。理解してほしいです。勇気を出していいたいと思うのですが敏感に感じてくれる人が増えたらいいとおもいますがなかなかむずかしいようです。夢をかなえることができたらうれしいです。未来はわかってもらうことができたらいいなと思いますがまだまだむずかしいのでしょうか。人間としてやっと認められたので勇気を出して住んでいる場所を変えていきたいと思います。来年いっぱいぐらいには来てもらえますか。人間らしい生活がしたいです。ぼくだけではなく仲間のことが心配です。人間として夢を大切に生きていきたいと思います。人間としての気持ちを大切にしたいです。いい未来がほしいです。理解してもらいたいです。
一歩一歩前進はしていることを言い訳のように伝えて、最近、多くの方々から歌を聴き取っていることを伝えたところ、次の詩とメロディーを教えてくれた。
願いの実がなる花が咲く
昔の夢を紡いできたが
実のなる花はまだ咲かぬ
実のなる花を夢に見て
ぼくは理想の時を待つ。
「まだ咲かぬ」という言葉や、語りそのものの寂しげなメロディーが胸にささる。そして、さらに文章は続いた。
曲を理解してもらえるとは思いませんでした。びっくりしました。敏感さに驚きました。あっています。自分で口ずさむのとは感じがちがいました。いい気持ちです。小さいときから曲を作っていましたがまさか聞いてもらえるとは思いませんでした。
(歌は)大好きでした。おかあさんがよく歌ってくれました。きりがないくらいたくさん歌ってくれました。いいおかあさんです。
(施設になかなか来れないのは)忙しいからしかたありません。いつも小さい孫の世話でたいへんです。がまんしていますが心配しています。元気かどうか。自分はだいじょうぶですから。体にに気をつけてください。(面会の時の)散歩は無理をしないでください。ぼくが体重が重いからです。(体をつっぱらせるので重く感じることについて)力がはいるのはしかたありません。(勝手に力が入ってしまうんですよね。)そうです。勝手に力がはいってしまいます。(力がぬける薬でもあればいいけど)薬はこわいです。ぼくたちは眠らされてしまいますから。薬についてもぼくたちの意見を聞いてほしいです。小さいときからの願いでした。
だいじょうぶです。また来てください
暖かい家族にかこまれて育てられた○○さんの思いは、いつも暖かい。ご両親のことをしきりに気遣う心のあり方は、すでに自立をとげているのみならず、人間としての成熟がある。
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2009年8月16日 08時05分
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家庭訪問 |
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3月に高等部を卒業した男性と関わる前に、3人で、意見交換の場を持った。話題は、2日後のHさんを招いてたときのことだった。
誰の発言ということは、うまく整理できていないが、1台のパソコンにそれぞれが言葉を書いていったままに記したい。
Hというひとはどこにすんでいるのですか
(千葉からです。)
ちぱけんからどうやってくるのですか
(バスだそうです。)
(H君の創作童話について)
すてきなはなしでしたか
じぶんはまだよんでいないのでわからないけどすごいね ものがたりをつくるなんて
Hくんはなんさいですか ゆうきがでてきますひいでたさいのうですね
にんげんとしてみとめられてよかったね
にんげんとしてみとめられてもっとみらいをひらいてほしいね
Hくんのしょうがいはなんですか
(自閉症です。)
じへいしょうといってもこころはわたしたちとかわらないのでしょう
ゆうきをもらえたらいいね
Hくんのはなしはだれがしっていたの
へーりかいしてくれたらうれしいね
ぼくたちのことをにんげんとしてきもちはおなじだとおもうからきたいしています
みらいがひらけるといいね
なにをきけばいいのですか
ねがいはゆうきをもらうことです
りかいをしてくれたらうれしい
ゆめをもっていきることがだいじだということです
にんげんとしてみとめられることがだいじだとおもうのでよろしくおねがいしますといいたいさです
りそうはりかいされることですがなかなかむずかしいとかんがえています
どうすればりかいしてもらえるのでしょうか
りかいをしてもらいたいです
なやんでもはじまらないのではやくこうどうにうつそう
なんでもいいからはじめることがだいじだとおもいます
じぶんのきもちをにんげんとしてうったえていければいいとおもいます
それにはりかいしゃをふやすひつようがあります
じぶんたちのきもちをはやくりかいしてもらうひつようがあります
みんなのきもちがひとつになればできるとおもいます
りかいしゃがひつようです
まずはゆうきをもってじぶんたちのこえをあげていきましょう まんなかにHくんをおいて
こんなんをのりこえていけばいいのではないでしょうか
思いのほか、進んでいく話に、やはりみんなが語り合うことの重要性を痛感するとともに、Hくんとともに、新しい時代が生まれてくる予感がした。
地球上の楽園に理想的な夢をまき、夢を笑いながら未来に向けて育てよう。
きっと理想の花が小さな実をつけて、みんなに笑いをくれるだろう。
わかってくれない人たちを待ち続けるよりも、一人でも多くの理解者を増やそう。
希望はわかってくれる人がいれば理解者が少なくても大丈夫です。
ゆいつの夢はわかってくれる仲間と困難に向かって
みんなでもっと勇気を出していければいいと思います。
詩です。歌ではありません。
ここで、あえて、歌を作っていないか尋ねてみたところ、あるという。そして、次の歌詞が書かれた。
願いの輪の中に ぼくらの夢を結び
身につけた理想をランプの光のようにともしながら
勇気を出して船出しよう
勇気が胸にあゆれたら
ランプはやさしく照らすだろう
やさしいランプの光のせいで
夢が明るく光るだろう
そして、歌について次のコメントをくれた。
小さいときから歌をいつも作っていました。ランプはいつもかあさんが寝る時につけてくれます。忘れられない美しさです。天井の電灯です。人間としての夢の象徴です。理想てす
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2009年8月16日 02時14分
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二人目は、32歳の男性だ。筆談によって少しずつ言葉を発し始めた彼に、2スイッチワープロでやりとりをした。
小さいころから話したかった。入院しているおとうさんが心配です。勇気が出てきました。びっくりしました。なぜわかるのですか。不思議です。力を入れていないのにどうして伝わるのですか。字を考えていて、ここだと思っています。びっくりです。人間として認められたような気になります。小さい時からの夢でした。小さい時からたくさん詩を作ってきましたので聞いてください。
果敢に挑み 人生を生きる
人生は闘いだから負けていいはずがない
敏感な自分の心を研ぎ澄まし
敏感に耳をすませて
人間としての未来をかちとろう
未来はきっと敏感な住んだまなざしに
凛とした姿を現すだろう
小さい時から場には入れてもらえず
いつも一人ぼっちだったから未来は夢だった
敏感な心が夢を持ち
敏感な心が願いをかなえ
未来が明るく広がった。
年齢の重みを感じさせる詩だった。闘いとしての人生に果敢に挑むという言葉が、これまでの日々を物語るようだった。詩の最後の方が、今まさに言葉を綴れることの喜びを語っているような気がしたので、この場で作った部分もありますかと尋ねると、そのことに答えながら、次のように語ってくださった。
はい。前から作っていた詩につけくわえました。詩を作っていると気持ちが落ち着きます。願いでした、自分の詩を聞いてもらうことが。
さらに、もう一篇綴られた。
静かに望みの花が咲く
人間として生まれて生きてきて
願いをたくさん持ってきて
勇気をたくさん敏感に育て
分相応に生きてきた
みんなに人間としての誇りを伝えきれず
静かに一人生きてきた
夢は祈りに変えて
一人で静かに生きてきた
勇気を持って楽園を目指し旅立とう。
そして、次のような感想が書かれる。
未来が開けてきました。びっくりしました、夢を見ているようです。人間として認められた気分です。小さい時からの願いでした。理解してくれてありがとうございます。詩を作っていることがどうしてわかったのですか。はい。わかりました。
ここで、さらに歌を作っていないかを尋ねると、あるとおっしゃる。そして歌詞が書かれた。
人生にみんな夢をもとう
一人で夢を育ててゆけば
未来はきっと開けてくるさ
一人で夢を勇気に変えて
勇気をもって夢をそらいっぱいにひろげよう。
そして、手を振りながら「ドレミファソラシド」と尋ねながら、メロディを聴き取った。そして、それを受けて次の言葉が書かれる。
信じられません。未来が開けてきました。夢みたいです。理想的な方法ですね。理解してもらえてうれしいです。未来が開けてきました。理想のやり方です。見たこともないやり方で驚きました。夢みたいです。
ここで、闘病中のお父さんへ手紙を書いた。
とうさんこれまでぼくを育てていただいてありがとうございます。勇気を出して病気と闘ってください。敏感な心で勇気を出してください。わたしたちをやさしく見守ってくれるからおとうさんが大好きです。理解してくれる人が現れましたからぼくはもうだいじょうぶです。理想的なやり方です。わたしたちはみんな言葉を持っているということをわかってもらえてしあわせです。勇気が湧いてきました。わたしたちのことを未来に向けて飛び立たせたいと思います。
ずっっしりと重い出会いだった。
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2009年8月16日 01時18分
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最近、精力的に活動しているグループがある。構成メンバーは、小4の女の子、中2の女の子、3月に高等部を卒業した男性、そして32歳の男性が中心メンバーだ。そのグループでは、コミュニケーションの手段として、援助による筆談を用いており、大きな成果を上げている。指で手のひらに書く方法で、相当なスピードで、会話が可能となっている。
私は、私の2スイッチワープロやあかさたなと手を振る方法でコミュニケーションをするのだが、みんな、方法をたくみに使い分けて豊かにコミュニケーションをしている。今回は、中1の女の子がお休みだったので、3人の方々と関わった。
この日は、実は、2日後に、自閉症の作家として有名な高校生を招くという企画を控えており、やりとりは、そのことをどこかで意識したものとなった。
最初は、小4の女の子。家族のことを話した後、次のような思いを語った。
未来が開けてきました。夢が実現しそうです。見たこともないような景色が開けてきました。未来が私にも美しくひろがってきました。自分の道は自分で開かなければいけないと思うけど、未来は理想的なものとなってほしいです。私の希望は人間として理解されて生きていくことですが、なかなかむずかしそうです。勇気がほしいです。勇気がほしいです。勇気をもらいたいです。理解してほしいです。みんなに私たちのことを。人間として生きようとしていることを。自分たちの声をみんなに届けたいです。人間として認めてもらいたいです。きっと話ができると期待しています。未来が開けそうです。
ここで、歌について尋ねてみた。すると作っているという。そして、次の歌詞を書いた。
気持ちを聞いてください
私の人間としての思いを
自分一人で生きてきて
一人で夢を紡いで生きてきた
光はいつも遠くを照らし
私のとこには届かなかった
人間として生きたいと毎日願い
光を求めて生きてきた
みんなと話がしたいと何年も願いながら
望みを捨てずに生きてきた
そんな私が願いをかなえ
夢がかなって言葉を持った
希望と勇気が湧いてきた
自分の言葉で気持ちを伝えたい
願いをみんなに伝えたい
途中、何か困ったような発声が続く、いったん中断してそのわけを手で尋ねてみると、言葉があふれて止まらなくなり収拾がつかなくなったらしい。
そんなこともあるんだと思いながら、とりあえず、書ききってもらった。その後、彼女が、メロディのさわりを聞かせてくれた。
ドシラドドシラソラソド
ドシラソドシラソラソソソドシシド
後は、筆談がとても速いお母さんが聞き取ってくれることになった。
彼女は、この後、2スイッチワープロで英語にも挑戦。
BOOK PAUSE
I HAVE A HOPE
と綴った。どこで覚えたのと聞くと、「英語であそぼう」がいちばん役に立ったそうで、海外旅行にでかけた際も、けっこう英語が理解できていたという。
可能性は限りなく広がっていく。
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2009年8月16日 00時15分
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駿河湾を震源地とした地震の2日後、静岡県に住む○○君のお宅を訪問した。高校1年生になった○○君は、もうすっかり、がっしりとした大人の体になっている。昨年、訪れた際に、書いてもらった文章に表れた彼の考えもすでにすっかり大人になっていたから、心も体もということになるだろう。
そんな彼が、最初にふれたのは、地震の話題。
地震が強くて驚いておかあさんに恐ろしいと抱きついてしまい恥ずかしかったけど聞いていた東海地震ではなかったので安心しました。
とのこと。
その後、しばらく、スピードがあがった読み取りの方法の話題をした後、詩について尋ねてみた。すると、書けるということで、次の詩をさっと綴った。
きれいなずしいろの小さな小さな夢が
ぼくの以前の友だちによしなしごとのように広がって
願いが小さい小さい宇宙に望みとともにきらきらと
ぬくもりとともに広がった
人間として小さな不可思議な存在だけど
小さなころいつも願っていたことがついにかない
ぼくは自分の道を望み通りに生きていく
不思議な不思議なのりものが
小さいぼくの傷のように
瑠璃色の光を放ちながら
願いの小さなあかしのように
不思議ないのちをさとらせた。
不思議な詩だった。見守っておられたご両親は、その内容の深遠さに、ただただ驚いておられる。私も、改めて、彼の心がすっかり大人の世界に足を踏み入れていることを実感した。書いてもらった後、詩について若干のやりとりをした。
(ずしいろについて)知らないけど不思議な感じの色です。本です。ちがいます。夢のなかで読みました。すてきな話でした。(瑠璃色について)知っています。深い藍色です。テレビです。詩は自分の気持ちを落ち着かせるために作っています。苦しいときに作っています。そうです。
そして、そのまま話題は、仲間の話へと移っていく。
願いはともだちと話すことです。みんなもきっと話ができると思いますから残念です。理想は人間としてふつうに気持ちを言えるようになることです。いい人間になりたいです。最悪なのはぼくたちが言葉を持っていないと思われていることです。ぼくたちもふつうに考えていることを学校の先生たちに知ってもらいたいです。それだけが望みです。
また、漢字を覚えるのに相撲が一役買っているのではないかという質問に対しては、こう続けた。
すもうの雑誌が好きなのは勇気が出てくるからです。がんばっている力士の話が大好きです。たとえば願いのかなわなかった力士が望みを捨てずにがんばるところがいいです。
ここで、話題は思いのままにならない体や声の問題に移っていった。
ぼくの体は勝手に反応してしまいとても困っています。小さいときからとてもいやでしたが、ぼくはなるべく力は入れないようにしています。望みは体が気持ちの通りに動くことですが夢みたいです。もし体が気持ちの通りに動いたらと何度も何度もくりかえし願ってきましたが理解してもらうしかないみたいです。いい人間になるためには体のことは関係ないのではないでしょうか。人間として人間らしい生き方をできたら、それ以上何が必要なのでしょうか。
意図に反して入ってしまう力のおかげで、誤解されることも多々あるらしい。そうしたつらい気持ちを小さい頃から抱えつつ、「理解してもらうしかない」「いい人間になるためには体のことは関係ない」というしっかりとした考えに到達していた。
さらに、彼は、次のような提案をした。
遠くから来てもらって申しわけありませんがもっと頻繁に来てもらえませんか。ぼくのともだちはまだ話すことができずに困っています。まだ話せずにいるともだちが気がかりです。もしできたら学校に来て言葉を聞いてあげて人間としての誇りを通りもどさせてあげてください。きっと話せると思います。運命かもしれませんが願いは願いとしてずっと持ち続けたいです。創世記という物語で理不尽な要求を神から言われて従う人のことが出てきますが、到底理解することはできません。自分たちはどうにもならないと考えたらそれでおしまいですから、願いは持ち続けたいです。人間として願いを大事に生きていきたいと思います。先日テレビでやっていました。不思議な話なのでまちがいではないかと思って気になっていました。
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もっと足を運んでほしいという彼のまっとうな要求に、簡単に胸をはれないでいる私に対して、彼は、創世記の話を持ち出してきた。「神の理不尽な要求」と言えば、息子をいけにえに差し出せと言われ、それに従おうとしたアブラハムの物語だと思われる。彼は、自分たちが置かれた状況をそこに重ね合わせて、与えられた運命にただ従うだけの人生を生きるのはいやだと力強く宣言しているのだ。
この後、あまりにすごい内容に驚いている私たちに、説明をしてくれ、この日の関わりを終えた。
ずっと黙々と考えてきたのでわかります。ふだんからよく耳をすませて生きているので、聞きながらいろんなことを考えています。漢字はわかっています。理解できてもわかってもらえないのがくやしいです。つながることが大切だと思います。わかってくれる人がほしいです。望みは理解してくれる人が増えることです。未来に向かって理想的な世の中となるように願っています。よい時間を過ごさせていただいてありがとうございます。いいスイッチですね。ぬいぐるみの生活から解放してくれる理想のスイッチです。可能性を信じてくださってありがとうございます。ありがとうございました。
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2009年8月14日 01時49分
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今年で37年目を迎える研究会で、二人の方の事例を報告した。その際、そのうちのお一人にじかにパソコンで会場の参加者の方々に、訴えかけていただくことにした。当事者の語りこそが重要だと考えたからだ。10分ほどの時間しか用意できなかったが、次のような言葉を会場のみなさんに訴えかけた。
小さ(い)ときから話をしたかったです。小さいときから自分の気持ちを伝えたかったです。にいさんやねえさんとして関わってくれる友もだちがほしいです。小さいころから願ってきました。自由がほしいと考えてきました。小さいころからの夢がかなってうれしいです。人間としていい人生を送りたいと思います。私たちは見た目で判断されることが理解を妨げていますが、みんな考えています。小さいときは理想の人生を送ることができると思っていましたが、なかなか思い通りにはいきません。人間として言いたいことを言って生きていきたいと思います。私たちの気持ちをわかっていただきたく思います。よろしくお願いします。
前日の夜は一睡もできなかったという。終わったあと、その理由を聞いたところ、緊張したからではなく、勇気を出すためだったという。また、自分のことを理解してくれていない人もたくさんいることが伝わってきたとも言った。
新しい時代が確実に拓かれようとしている。
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2009年8月10日 16時48分
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4月の終わりに、一人の少年が亡くなった。高校1年生になったばかりだった。何度かこのブログでも紹介してきた少年だ(2009年2月25日、1月8日、2008年10月17日、8月22日、8月6日、6月18日)。愛育養護学校で小学生時代を過ごし、津守真先生をはじめとする先生方によって、心を豊かに育まれて来た少年だった。
その時、彼の死のことをメールでやりとりした同じグループの高校2年○○君がいる。まず、その時の追悼文を紹介したい。
☆☆君へ
綺麗な言葉で希望とか期待する気持ちとか聞いて主(自分のこと)と同じだと思いました。
期待して希望捨てない生き方して叶うことしてきたのに、神(様)の近くに行きたい思ったから神(様)連れて行ったと思います。
死ぬのはいつでもできるのに死なないで世の中の人失礼直して躾しないといけないのに希望言って死ぬのは、滝に打たれて生きていくことから逃れています言いたいけど、修行していつも頑張ったから「お上がりなさい」神(様)言って
頂いたと思います。
死と向き合いながら生きて「ちくしょう」しない生き方して、☆☆君したいけど出来なかったこと主(自分)していつか行きますから待ってて下さい。
聞いていたら「追って行くしないよ世の中の人躾したら行くよ」
さようなら。
お母さんが「あかさたな」と言いながら目などの反応で言葉を読み取っておられるのだが、できるだけ短い言い方をするために、独特の文体になっているが、彼の思いは、ひしひしと伝わってきた。
夏休みになって、○○君とじかにお会いした。そして、亡くなった少年のことを偲ぶ詩を含めて、次のような文章を書いた。
未来が開けていきそうですがなかなかうまくはいきません。危機になりそうです。
聞いてもらいたいことがあります。なぜ自分たちは気持ちを聞いてもらえないのでしょうか。人間として扱われていないような気がします。人間らしく生きたいと思います。理解してくれる人が必要です。敏感な人が少ないので困っています。理解してほしいです。よい方法ですね。理解してくれる人がほしいです。
書きたい詩があります。
小さい願いは願いのままに
小さく空に消えた
未来の夢はなくなって
美はよい昔の魔法のように
日常の中に消えた
天に逝った昔の友は
見たこともないミラクルを知らずに消えた
ぼくたちの的はつらい世の中だ
人間としての危機だということを世の中は知るべきだ
小さいいのちかもしれないが
未来は誰にも等しく開けている
小さく分相応に生きるのはやめて
敏感に頭を研ぎ澄ませ生きていこう
あしたは小さいみんなにも大きく開けているのだから
聞いてくれてありがとう。言いたいことが言えていい気分です。詩を小さいときから作ってきたのでだいぶたまってきました。自分の詩集が作りたいたいです。気持ちが言いたいです。身の回りを見回すとなかなか望み通りにいかないことが多いけど未来を信じて生きたい。自分の体は勇気を必要としていますが新しい時代を切り拓くためには度に出る必要があります。まして敏感な人を探して小さいときからがんばってきましたがなかなかみつかりません。
神様や愛について語り続けた☆☆君と、常に現実に立ち向かおうとする○○君と、タイプは違っていたが、深いところでつながりあっていた。詩の中に登場する「見たこともないミラクル」とは、彼らの言葉が当たり前に理解される時代が来るということだろう。☆☆君には間に合わなかった「ミラクル」の時代の到来を、座して待つのではなく、果敢に戦いながら、ともに切り拓いていきたい。
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2009年8月10日 16時01分
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自主G23区2 |
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